愛媛ならではの菓子と言えば、タルトや坊っちゃん団子などいろいろありますが、「受け継がれた銘菓ラムリン」を知っていますか?「受け継がれた」とはどういうことなのか、長年にわたって人々に愛される魅力を取材しました。
1956年から製造販売 しかし2021年、歴史に幕…
地元で観光ボランティアをしている男性を訪ねました。
観光ボランティアガイド 関清剛さん
「『くろふね』というお菓子屋が、昔からご家族で一つ一つ丁寧に作って包装した感じの、ラム酒の良い香りがするお菓子」
今治市内の「くろふね菓舗」が1956年から60年以上にわたって作り続けていたラムリン。後継者がいないことなどを理由に、店は2021年、長い歴史に幕を下ろしました。
ところが、ある転機が…。
「ぜひ今治に残したい」引き継がれたラムリン
観光ボランティアガイド 関清剛さん
「くろふね菓舗が育ててきたラムリンの味をそのまま埋もらせてしまうのはもったいないと思った方がいらっしゃって、ラムリンが今治市内で復活した」
時代の流れとともに一度途切れたラムリンの歴史を再び動かし始めたのは、市内の菓子類卸売業、アリスタ・木曽。そのきっかけを作ったのが、社長の野間照博(あきひろ)さんです。
アリスタ・木曽 野間照博さん
「くろふね菓舗にとっては自分の子どものような思い入れの深い商品でしたので、これだけ良いお菓子は今治に残したいという気持ちで、ぜひ引き継がせてほしいと思いました」
野間さんは「たっぷりとラム酒シロップに浸しているため、ズッシリとしたのが懐かしく、昔ながらの形が良いと皆さんに喜んでもらっている」と話します。
「再販する以上はこれまでのラムリンと同じ味、納得したものでないといけない」ということで、昔からラムリンを愛している方々にも試食してもらったそう。「ラム酒の染み込み方が甘い」「もっとラム酒がガツンと効いていた」など、それぞれのラムリンの思い出に近付けられるように味を再現していったといいます。
試行錯誤を重ね“復刻版ラムリン”
そのラムリンを製造しているキッチンが、今治市内にあります。受け継がれてきた秘伝のレシピをもとに、復刻版・ラムリンを作っています。
しっとり柔らかな生地作りや、気温によって変わるラム酒の染み込み具合の調整など、復刻版ラムリンの“美味しさのカギ”を握る、佐伯洋一郎さん。
佐伯洋一郎さん
「手作りのお菓子なので、なかなか自分の思うようにできないこともあるんですけど、良いものを作ろうと思って試行錯誤を重ねて『これだ!』というものが出来上がった時が一番楽しいですし、積み重ねてきた苦労もパッと消える瞬間があります」
そんなラムリンですが、1日に作る数は最大でも500個程までなんだそう。
アリスタ・木曽 野間照博さん
「全て手作りで昔ながらの味を守っていきたいということで、真心を込める気持ちがきちんと伝わるように作っています」
一度は姿を消したラムリンがまた食べられる…!その美味しさの復刻は、ラムリンファンにとって大きな出来事でした。
ラムリンファン 河野智美さん
「ラムリンがなくなって、似たようなお菓子を探し回ったりラム酒のお菓子を探し回って『なんか違うな』という日々でした。復刻したラムリンは包装も中のラム酒の染み込ませ方もすごく丁寧さが伝わってきて、受け継いでくださったことに感謝です」
時代を越えたラムリン 地域をあげてPR
今治市内のスーパーマーケットや農産物直売所など、市民の暮らしに根差した地域のお店で販売が始まったラムリン。
一方、市内に去年オープンした店「Pacific Parlor」では、ラムリンのお勧めの食べ方や、ラム酒を使ったドリンクを楽しむイベントを開催するなど、地元銘菓をPRしています。
Pacific Parlor 秋山真哉さん
「ラム酒ベースのカクテル=モヒートの発祥は、カリブの海賊なんです。海賊が飲んでいたお酒がモヒートなんです。今治で海賊…、村上海賊。今治の文化が語れるんです」
さらに秋山さんからは「表面を焼いてカリッとすると、よりジューシーに感じられる」といったアイデアも。
時代を越え守るものと、これからの可能性を広げる新たな挑戦。今治のソウルスイーツが、その歴史の第2章を進み始めています。
アリスタ・木曽 野間照博さん
「『ラムリンを復活してくれてありがとう』と言われたり、あらゆる人から声をかけられ復活して良かったと思っています。地域の文化を守ることがすごく大事だと思っているので『今治に来たらラムリンが楽しめる』というような、そういうお菓子になってくれたらすごくうれしいなと思います」
ラムリンはふるさと納税の返礼品にもなっていて、多い時で月200件の申し込みがあるそうです。また、今治で購入してもらいたいためネット通販はしていません。都市部でのイベントやアンテナショップでも販売されていて、ふるさとを懐かしむ人に人気だということです。
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