今年は早くも長野県内でも30度以上の真夏日を記録しました。
2023年の記録的な猛暑も思い出されますが、今年の夏に向けて暑さはどうなるのか?
そして、温暖化の影響と農業分野での対策を取材しました。


ゴールデンウィーク後半の5月5日。

長野市では最高気温が32.9度まで上がり、2日連続で真夏日となりました。

県外から訪れた人たちも、暑さへの驚きと不安をのぞかせます。

静岡の男性:
「長野涼しいと思ってたんですけど」
男の子:
「めちゃくちゃ暑い」

京都の男性:
「京都と変わらないぐらい暑くてビックリしています。農作物の育つ環境が変わるので、稲刈りとかも早くなってそこが心配です」

福島から:
「海の魚がだいぶ変わっているみたい。(福島で)南の魚が取れてるよ。タチウオとか、ハマチとか、イセエビが取れてるね」

東京から:
「もう夏ですよね、暑かったです。みんなやっぱり(夏は)エアコンとか使うでしょうから、電力不足は大丈夫なのかなって心配しています」

地球規模で起きている温暖化。


実際に世界の平均気温は、19世紀末から100年当たり0.76度のペースで上昇を続けています。

ここ半世紀ほどの推移を見ると、緯度が高い場所ほど影響が大きくなっています。

温暖化による乾燥で森林火災が起こり、大量の二酸化炭素が空気中に放出されるという悪循環も世界各地で発生。

温室効果ガスの削減などの対策を取らない場合、県内の平均気温は今世紀末にかけての100年で、3.6度から6.7度上昇すると予測されています。


県環境保全研究所・温暖化対策班 浜田崇(はまだ・たかし)主任研究員:
「年年に上がったり下がったりというのはありますけれども、温暖化の傾向自体は続いていて、特に2010年以降、すごく早いペースで温度が上がっているのが実態です」
「すでに影響といっていい部分もあると思うが、農業、それから生態系の変化、それから温度に関わるところで健康、とくに熱中症リスク、それから台風19号などの災害も増えているので、自然災害といった分野が一番心配されている」


デング熱などを媒介するヤブ蚊「ヒトスジシマカ」は、年間の平均気温11度以上が生息域。

最悪のケースを想定した場合、今世紀末には県内のほとんどが生息域になる可能性もあります。

また植物も大きな影響を受けます。

2023年は記録的な猛暑により、農業にも被害が出ました。

コメを栽培する男性:
「去年本当にあんまり取れなかったんでうちは…」
「ふつう稲刈ると、そのあと生えてこないんですけど、そのあとどんどん生えてきて、同じぐらい穂が伸びたりして、あんなの見たことないです」


コメやリンゴを栽培する男性:
「去年はやっぱりコメ自体は良くなかったですね。水が熱くてダメだったですよね」
「いまここコシヒカリですけど、コシヒカリじゃないコメにだんだん変えていく形になるんじゃないかと、近い将来」
「リンゴ去年はだめだったです。普通なら赤くなるのに赤くならなくて黄色っぽくなっちゃって、私はちょっと今年は接ぎ木しましたけどね。秋映(あきばえ)っていうリンゴにしたり、ちょっと早いし楽だし、あれが赤くならないってことはないから。売れるリンゴじゃないと」

今年も、気象庁の3か月予報では、5月から7月にかけて、全国的に気温が平年より高くなる見通しが示されています。

有効な対策はあるのでしょうか。


環境保全研究所・浜田研究員:
「個人とすれば、温室効果ガスをなるべく出さないようにするということに尽きると思う。結果として地域なり社会全体がゼロカーボンになっていくということで、温暖化のような気候変動に歯止めをかけることができるようになると思う。その一方で、いま私たちが言っているのは、どうしても進んでしまう『温暖化に対する適応』ということも、あわせて取り組む必要があるとお伝えしている」

温暖化対策の一つとして、農業分野で進められているのが暑さに強い品種の開発です。


県農業試験場育種部・小野佳枝(おの・よしえ)部長:
「このハウスのなかで、外の高温の条件を再現するということです。このハウスのなかでは外よりも温度を高くということで、1日の平均気温を27度以上になるように、この横ですとか天窓といいますけど、上の窓を開け閉めして高い温度を保つように管理をしています」

このハウスで8日から始まったのが、品種改良のためのコメの田植え。

コメも暑さの影響で品質が低下してしまうといいます。

実際に見比べてみると…。


小野さん:
「こちらが正常のお米の粒なんですけども、温暖化になると、こちらのように中が白っぽく濁った白未熟粒という、でんぷんがうまくたまらなくて品質が落ちる粒になってしまうことがある。これは胴割粒(どうわれりゅう)でして、粒の中に亀裂が入ってしまうことがある」

ここでは10年以上前から暑さに強い品種の開発を目指していて、60種類ものサンプルを栽培し、試験を繰り返しています。


小野さん:
「温暖化傾向だからといって、ずっと暖かいわけじゃなくて、最近、霜が問題になることがあるように、生育が温暖化で進む一方で、そのあと気象変動も激しくて、それに合わせて冷害に対しても抵抗性を持つもの、あわせて食味も良くおいしい品種であること。それと病気や温暖化になって病気や害虫の被害が増えてくる傾向がありますので、そういったものに対しても抵抗性をあわせて持つような品種の開発も進めています」

対策を徹底した場合でも、今世紀末までに2度ほどの気温上昇が予測されている世界の気温。

先を見据えた取り組みが続いています。

鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。