能登半島地震から3か月あまり。被害が大きかった石川県輪島市では8日、中学校の入学式が行われました。不安を抱えながら新たな生活を始める子どもたち、さらに“支援する側"として厳しい立場に置かれやすい教員たちを支えようという動きを取材しました。
能登の中学生を支援、新しいセーラー服で入学式に
地震から3か月あまりたった今も、甚大な爪痕が残されています。
石川県輪島市では8日、消防署を使って被災した小・中学校の入学式が行われました。
新入生の1人、酒井愛菜さん。輪島中学校に入学します。
酒井愛菜さん
「お姉さんになった気分。楽しみです」
愛菜さんが着ているのは真新しいセーラー服。
このセーラー服にはある“秘密”があるのです。
3月29日。
入学式を目前に控え、愛菜さんが近所の洋品店にセーラー服を受け取りにいくと。
洋品店の店員
「おめでとうございます。頑張ってくださいね」
「お金は要りません」
無料で手渡されたセーラー服。
実は…
被災した家庭にとって大きな負担となる入学の準備にかかる費用を支援するため、街頭募金やインターネットを通じて寄付を募集。奥能登地方で中学校に入学する子ども100人を対象に、入学に必要な制服やカバンなど1人8万円相当が贈られました。
洋品店の店員
「(目標額)達成したらしく」
愛菜さんの母・美紀さん
「ありがたいです」
酒井さん一家は家族で理髪店を営んでいます。
しかし…
愛菜さんの祖父・博信さん(1月下旬)
「まだ水来てません」
「自分の家がこんな状態なので(営業)できなくて困っています」
店舗兼住宅は地震で大きく損傷。断水による休業も約1か月に及んだうえ、営業を再開してからも輪島の外に避難している人も多く、客足は減少しているといいます。
愛菜さんの母・美紀さん
「家計的に苦しいかなと。(制服支援は)助かるというか嬉しかった」
早速、受け取ったセーラー服を試着してみると。
愛菜さん
「リボンってどうやってつけるん?」
「着方とかまだよくわからなくて手こずる」
はにかんだ笑顔で喜ぶ愛菜さん。
そして8日、入学式を迎えました。
愛菜さんの祖父母
「気をつけてね、いってらっしゃい」
愛菜さん
「中学生になったんだなって。いろんな行事とかもつぶれたりするかもしれないけれど、1つでも楽しい行事ができるかどうかが不安です」
空き教室に“仮設住宅” 被災者でもある教員を支援
不安を抱えながらの新生活。
それは、生徒を支える側の教員も同じです。
珠洲市にある中学校。
訪ねてみると、教室の中にリビングが。
奥の扉を開けてみるとカーペットが敷かれ、ベッドが置かれています。
これは、学校の教室につくられた“仮設住宅”。
自宅が被災し、住む場所のない教員たちに少しでも安心して生活してもらおうと、3つの学校の空き教室に住居スペースをつくり、20人あまりの教員が生活できるようにしました。
入居する1人、南豪史先生は2か月あまりにわたり職員室で寝泊まりしながら勤務を続けてきました。
珠洲市立大谷小中学校 南豪史教諭
「仕切りがあると思っていなかったので、個別のスペースがあるということが驚きですし嬉しい。いい部屋を与えてもらったので、本当にそこはよかったなと思います」
教職員は、自らも被災者でありながら“支援側”に回らなければならず、厳しい立場に置かれやすいといいます。
南先生はホッとする一方で、複雑な気持ちも。
南教諭
「学校は子供たちが使う場所でもあるので、そこは心苦しいなとは思います。とにかく子供たちのために頑張って働きたいというのがありますし、その分ちょっとでも多く地元に貢献できればいいかなと思っています」
不安や苦悩も抱えながら、手探りの新生活が始まります。
教職員も被災 ケアする側の支援を
藤森祥平キャスター:
地震発生後、すぐに避難所になった孤立集落の小学校に行くと、被災しているにも関わらず「学校のことを一番知ってるのは職員や先生たちだ」と休むまもなく先生たちが使命感であれこれ行うんですよ。訓練でも避難所の指揮系統になる経験もない中で、休まずやらなければいけない、このケアをどうするか。
小川彩佳キャスター:
子供たちのためにと、自分のことを後回しにしている先生方も多いでしょうね。
英語通訳・翻訳者 キニマンス塚本ニキさん:
「1日でも早く元通りの生活に戻りたい」と皆さんが思っていて、そのためにも、「子供たちのために制服を一式揃えたい」という気持ちもあると思います。
皆さん、被災者としては同じかもしれませんが、先生は30〜40人の子供たちのケアをしないといけない。先生1人のケアがちゃんとされていないと、先生が疲弊してしまったら子供たち全員にしわ寄せがいってしまうので、ケアラーをケアする対策もしっかりと重要視するべきだと思います。「使命感が強くて素晴らしい」と、美談になるのは良くないんじゃないかなと心配しています。
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