横浜市営バスが4月だけで2度にわたり減便したため、利用者からは困惑の声があがっています。一体何があったのでしょうか?

■深刻化するバス運転手不足…解消のカギは女性と外国人

加藤シルビアキャスター:
路線バスの減便の理由の一つには、運転手不足もあるということです。

横浜市営バスでは、運転手不足などで減便が2度行われました。保土ケ谷営業所では現在、運転手は158人所属しているということですが、2024年3月末までに9人が退職し、減便の要因の一つとなりました。人材確保のために▼平均で6.65%の賃上げを行ったり、▼住宅手当を約3万円増やしたりという対策をとっています。

また、都内でも、小田急バスが人手不足などのため、3月から一部路線を廃止・減便しているということです。だんだん、路線バスの人手不足というのが深刻化してきている状況です。

日比麻音子キャスター:
2024年問題というのは以前から話題になっていたのにもかかわらず、なかなか対策が間に合っていない現状がみえてきてしまいましたね。

東京大学准教授 斎藤幸平さん:
こういうバスとかは、減ってしまうと余計に不便になって、より使わなくなってしまいます。さらに経営が苦しくなって、さらに減ってしまうみたいな悪循環になったりするので、難しい問題ですよね。

日比キャスター:
これから暑くなりますから、バスの待ちがどんどん減ったらいいなと思うんですけれども、どうすればいいのでしょうか。

加藤キャスター:
人手不足の解消に向けて今、全国的にさまざまな取り組みがあるということです。

まず女性バス運転手の割合は、2021年度のデータ(国交省資料より)によると全国平均で1.7%。かなり少ないということが数字からもわかるかと思いますが、女性バス運転手を積極的に採用しているのが奈良交通です。

184路線のバスを運行している奈良交通は、8年前(2016年)から労働力確保のため女性の方を積極的に採用し、▼短時間勤務や産休・育休などを導入。また、▼深夜・早朝ではなくて、データイムの勤務のみという選択もできるようになったそうです。

2023年4月に入社した橋本さん(34)はお子さんがいらっしゃいますが、「子どもとゆっくり過ごせる時間も確保できてありがたい」と話していました。

そのほかにも、▼女性運転手専用の休憩室・仮眠室などを整備。現在、女性運転手の方は29人いて、8年前に比べて3倍に増えたということです。

また、女性だけではありません。今後は外国人の採用も…ということで、▼政府は人手不足に対応するための「自動車運送業」などを「特定技能制度」に追加し、3月に閣議決定しています。

そういった背景があるなかで、愛知県岡崎市では「岡崎モデル」として、全国初の外国人運転手の実現に向けて整備を行っているということです。具体的には▼名鉄バスとの連携、▼日本語学校への派遣、▼就労アドバイスなどを予定しているということです。

都内でも東急バスが受け入れ態勢の準備中だということで、こうしたことが今後広がっていくのかもしれません。

■AI活用で運転手の労働時間や経費を減らし、効率化する取り組みも

加藤キャスター:
また、人材だけではなく、AIも活用していこうということで、こういった取り組みがあります。北海道網走市で路線バスを運行している網走バスは、▼AIデマンドバスの「どこバス」というものを運行しています。2024年4月から本格運行し、今まであった路線バス7台を、「どこバス」5台に置き換えました。

「どこバス」とはどういうものなのかというと、電話やwebサイトなどで予約をすれば、AIが最適な経路を導き出してくれます。すると、予約が入ったときに、乗客がいる区間だけ運行することができるということで、結果として運転手の労働時間が平均で3割減りました。ガソリン代など、経費も削減できたということです。

気になる料金は、片道で500円~700円。バスよりは高いけれども、タクシーよりはぐーっと料金が抑えられるということです。

山内あゆキャスター:
バスとタクシーの、ちょうど間みたいな感じですか?お客さんがいるときにバスが出る?

加藤キャスター:
そうなんです。しかも、かなり細い道にもバス停を設置したということで、乗り降りできる場所が1.5倍に増えました。約300か所あり、自分が行きたいところによりダイレクトに行けるようになったということで、かなり効率化されている取り組みです。

日比キャスター:
地域や人数によって、さまざまな最適解というものがあると思いますので、こういった選択肢をまず増やしていかないと、といったところですかね。

東京大学准教授 斎藤幸平さん:
AIとか自動運転とか、外国人労働者の方に来てもらうとか、円安もあるし賃金が低いと厳しいと思うんですけれども。

もともとの横浜の問題に戻れば、市バスはこの間、そもそも賃金が高すぎるみたいなバッシングが結構ありました。実際、賃金が減らされていたりだとか、あとは税金を入れているのはもったいないということで、補助金を入れないようにしたりとか、そういう改革をやってきてしまったんですよね。

ただ、やはり交通というのは社会インフラの一つなので、市の補助金や国の補助金を入れていくようなことも、改めて考えざるを得ないところに来ているのではないかと思いました。

山内キャスター:
今、高齢ドライバーの問題もあるじゃないですか。もう運転はやめようと思っても、その代替手段となる公共の交通機関がないと、免許の返納もできなくなってしまいます。

小さくてもいいからいっぱい運んでくれるような車は、もうちょっと増やせないのかなと。これ、郊外に住んでいる者としては切実です。

東京大学准教授 斎藤幸平さん:
移動権という概念があるのですが、一つの権利なんですよね。「年を取ったから家にいてください」というのでは健康も害されて、余計に医療費がかかってしまったりもするので、みんなが安心して外出できるように、バスや電車は大事だと思います。

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<プロフィール>
斎藤幸平さん
東京大学准教授
専門が経済思想・社会思想
著著『人新世の「資本論」』50万部突破

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