東京・新宿区のタワーマンションで女性が殺害された事件。女性が経営していた店の関係者がJNNの取材に応じ、逮捕された男が過去に店でトラブルを起こしていたと明かしました。

「容疑者が一方的に熱」 関係者が明かすトラブル

積み上げられたグラスのタワーに笑みを浮かべながら高級シャンパンを注ぐ女性。おととい、西新宿のタワーマンションで殺害された平沢俊乃さん(25)です。

平沢さんを刃物で刺して殺害したとして、きのう送検されたのは和久井学容疑者(51)で、平沢さんが経営していたクラブなどに客として訪れていました。

クラブの関係者がJNNの取材に応じ、当時の様子を話しました。

平沢さんが経営していたクラブの関係者
「(和久井容疑者は)最初は普通の良いお客様だったんですけど、日に日に来客回数が増えるにつれて、態度はどんどん変化していった」

和久井容疑者は平沢さんへの付きまとい行為で2年前に逮捕されています。

平沢さんが経営していたクラブの関係者
「容疑者が一方的に熱が入っちゃって恋愛感情で先走る。周りに『結婚するから結婚するから』と言っていた。どうにもならなくなったと聞きました。お店の中で暴れたりとか、営業妨害になっていたので」

行動はさらにエスカレートしたといいます。

平沢さんが経営していたクラブの関係者
「(平沢さんの)家がばれて、お店から家まで付きまとわれたり、家の近くで待機していたり。(平沢さんは)自分の身が危ないってことは言っていましたね」

和久井容疑者の自宅には、平沢さんの顔がプリントされたボトルが飾られていました。

父親はこう振り返ります。

和久井容疑者の父親
「なんか結婚するって話もあったんだよね。それで車もオートバイも売って現金にして渡したら、なんかこれ(連絡が取れなくなった)みたい」

和久井容疑者は事件の動機について…

和久井容疑者(供述)
「店の経営を応援するために1000万円以上のお金を出した。お金を返してもらうつもりだった」

和久井容疑者は以前、自宅のある川崎市の警察署を訪れ、自らの主張を訴えていました。

和久井容疑者
「女性に多額のお金を渡している。返して欲しくて女性を待ち伏せしたら、警察から注意を受けた」

警視庁は2人の間に金銭トラブルもあったとみて、事件のいきさつを調べています。

“良い客”だった容疑者…ストーカー規制法違反で逮捕後に「禁止命令」

南波雅俊キャスター:
新宿のタワーマンションで女性が刺された事件についてみていきます。

まずは4~5年前の2019~2020年が最初のきっかけで、被害者の平沢さんが経営しているクラブなどに、犯人の和久井容疑者は客として通い出しました。

平沢さんが経営していたクラブの関係者は「(和久井容疑者は)3か月くらいはほぼ毎日来ていました。周りに『結婚するから結婚するから』と言っていた。一方的に熱が入っちゃって、どうにもならなくなったと聞きました」と証言しています。最初は“良い客”だったのですが、だんだん変化していったということです。

そこからストーカー行為を繰り返すようになっていったということで、2022年5月、ストーカー規制法違反の疑いで一度逮捕されています。

しかし、初犯だったということもあったかもしれません。6月には処分保留で釈放され、平沢さんへの禁止命令が出されます

その後の時系列ですけれども、1年後の2023年6月に禁止命令が解かれました。ただ、そこから1年経たずに2024年5月8日、平沢さんが刃物で刺され亡くなったというわけです。

日比麻音子キャスター:
この事件について、どのようにご覧になりますか。

元埼玉県警捜査一課刑事 佐々木成三さん:
2年前・2022年の行為については、警察が積極的に関与しているのがわかります。

実際、ストーカー規制法違反の疑いで逮捕される前に、被害者から相談を受けて、容疑者に一度警告をしています。警告をしたにもかかわらず、また付きまといをしたので逮捕しているわけです。

逮捕して、処分保留で釈放になったときも「まだこれはストーカー行為を繰り返す危険性がある」ということで、容疑者に即、禁止命令を出していました。

その禁止命令というのは、1年が有効期限になります。1年が経ったときに、容疑者がその間は何ら行動をしていないと被害者に確認して、被害者が身の危険を感じていないとなったら解かれるのが原則です。禁止命令の解除というのは、警察の判断としては間違いではないと思います。

日比キャスター:
1年ほど経ってしまっているということになりますから、本当にどうすればよかったのだろうかと思いますが…。

元埼玉県警捜査一課刑事 佐々木成三さん:
実際、容疑者に関しては処分保留になってからほぼ2年ほど、被害者に関しては行動を起こしていない、警察は認知できていないということになったとき、警察がすべき行動というのは、今のストーカー規制法の流れでは限界があるという感じです。

しかも今回は、かなり決意を持って犯行をしていますので、その容疑者を止めるためには警察だけでなくて周囲、被害者の危機管理意識だとか、そういったものを含めて、抑止できればというのはあると思います。

そもそも「禁止命令」とは?延長か解除かは、警察が被害者に確認し判断

南波キャスター:
具体的に禁止命令というものをみていきます。これはストーカー行為など緊急性が認められた場合に、被害者の申し立てによって警察署長などが発令するものです。

では、どういうことが禁止されるのか。被害者の自宅や勤務先周辺でのうろつきや待ち伏せ、それから電話やメールなども含めて、ストーカーに関する行為はすべて禁止されます。こういった禁止命令というのは、2023年だけで2000件近くありました。

禁止命令中は被害者に対し、警察は定期的に電話などをして状況を確認します。そして加害者に対しては、こちらも連絡をとって状況を確認します。場合によっては、カウンセリングなどを呼びかけることもあるわけです。

ポイントは有効期間1年というところで、満了前に被害者側に警察が確認をして、禁止命令を「延長」するか「解除」するかを判断します。今回のケースは解除されていたわけです。

もし禁止命令の期間中に違反、ストーカー行為をした場合には、罰則として2年以下の懲役、または200万円以下の罰金が科されます。

ストーカー関連に詳しい佐藤みのり弁護士によると「偶然に街で会ってしまった場合は罪に問うことはできないが、繰り返し付きまとうなどのストーカー行為をした場合は命令違反となります」ということです。

東京大学准教授 斎藤幸平さん:
今のお話を聞いていて、なかなか防ぎようがなかったという感じです。

最近“頂き女子”のお話とか、ホストクラブにハマって逆に女性のほうがすごい借金を負ってしまうとか、正当化するわけではないですが、今回の男性もかなりのお金を貢いでいたということで、行き過ぎたお金のやり取りに対する規制みたいなものを考えなければいけないところに来ているのではないかと思いました。

元埼玉県警捜査一課刑事 佐々木成三さん:
警察は、2万件の被害相談を毎年受けています。相談を受けたらほとんどが警察で解決できているという事実もありますので、ストーカー行為で悩んでいる方は、ぜひ警察に相談していただきたいと思います。

日比キャスター:
まずは相談をする、そこからですね。

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<プロフィール>
佐々木成三さん
埼玉県警本部捜査第一課に10年間在籍
現役時代はサイバー捜査の導入に着手

斎藤幸平さん
東京大学准教授
専門が経済思想・社会思想
著著『人新世の「資本論」』50万部突破

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