1日に行われた熊本県での水俣病患者らとの懇談の際に環境省が発言中のマイクの音量を絞った問題で、新潟水俣病被害者の会など5つの団体は10日午前に会見を開きその姿勢を強く非難した上で、新潟でも懇談の場を持つよう大臣に求めました。

【新潟水俣病被害者の会 小武節子会長】
「怒りと、何というか、もう呆れかえっています」
【新潟水俣病患者会 萩野直路さん】
「水俣病の事実と向き合おうとしていないですよ。なぜメチル水銀が流れた地域だけに手足の感覚障害を訴えている患者が多発しているのか。その事実と全く向き合っていない」

怒りの矛先となったのは、環境省の伊藤信太郎大臣が水俣病の患者や被害者団体の話を聞く場として5月1日に開かれた熊本県での懇談会です。

【水俣病患者連合 松崎重光副会長】「私はいつも家内と話していました」
【環境省職員】「申し訳ございません。話をおまとめください」
【水俣病患者連合松崎重光副会長】「…」
【他の参加者】「切られた、スイッチが ―」

発言の持ち時間の3分を過ぎたとして、環境省側が団体側のマイクの音を絞り、懸命の訴えを遮ったのです。

その1週間後に伊藤大臣は熊本県水俣市を訪れ、患者団体の関係者に謝罪しました。

【環境省 伊藤信太郎大臣】
「環境省の大臣なので、このことをいかに大切に思っているかということをお伝えしたい」

新潟では5月末に、新潟水俣病の公式確認から59年を迎えるのに合わせ、歴史と教訓を伝える式典が開催されます。

実は2015年に開かれた新潟水俣病の式典の際にも、当時の望月環境大臣と新潟県内の関係者の懇談の場が設けられましたが、この時も環境省側は、予定の時刻を過ぎると懇談を打ち切ろうとしていました。

「本当に解決しようという気があるのか!」
「50年待っているんです。それを5分過ぎたからといってね、打ち切るというのはおかしい」
「次の予定がございますので、ご了承・ご理解いただければと思います」
「きょうのような返事では、全くこの問題を解決しようという気は、さらさら見えない ―」

このとき以来、環境大臣と新潟県内関係者との懇談は行われていません。

【新潟水俣病阿賀野患者会 曽我浩会長代行】
「新潟では意見を述べる場さえ与えられていません」
「熊本と新潟は同じ患者が沢山いますので、懇談の対応をしていただきたい」

10日に会見を開いた新潟水俣病関係者団体のメンバーは、5月末に予定されている新潟水俣病の式典への、伊藤大臣の出席と懇談会の開催を求め、新潟県に要望書を提出しました。

しかし、この要請の2時間半前に伊藤大臣は、自らはこの式典に出席せず、代わりとして国定勇人環境政務官を派遣する方針を明らかにしています。

【環境省 伊藤信太郎大臣】
「地域は違いますけども、“水俣”ということで、熊本と同じく重要な問題だと考えております」
「地元の声を丁寧に聞いていただく。そして私自身は国定政務官からしっかり報告を受けたいと考えております」

果たして、伊藤信太郎環境大臣が直接、新潟水俣病の患者や被害者らの声を聞く機会はくるのでしょうか?

【新潟水俣病被害者の会 小武節子会長】
「今年こそはぜひ、新潟にも来て患者さんの訴えを聞いてもらいたい」

【新潟水俣病阿賀野患者会 酢山省三事務局長】
「当事者の痛み、被害の実態、そのことに注目しないで、終わったかのごとく『歴史と教訓』ということにはならない」

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