新潟県柏崎市のアニメスタジオで働くアニメーター・長澤達也さん(34歳)は、柏崎市にアニメスタジオができたのを機に、東京から“移住”しました。

「アニメが好きって言うと、テレビで放送されたアニメが好きみたいな感じになっちゃうんですけど、僕が好きなのは、自分で絵を動かすアニメ。自分でアニメを作ることが好き、っていう方向性でしたね」

ワンピースやプリキュアなどの人気アニメの原画を描く仕事のほか、地域を舞台にした『ご当地アニメ』も手掛けています。

工業のまち・柏崎をPRするアニメ『飛び出せ柏崎II』では、ものづくり企業10社の社風や製品が、ユニークなキャラクターとなって登場します。

「新潟の地元っていう小さなプロジェクトだけど、こんな面白いことをやってるところがあるんだよっていうのを、今ならYouTubeで、それこそ全国や世界レベルの発表の場で出せるっていうのが、いいとこなんじゃないかなって思います」

『柏崎アニメスタジオ』は、東京のアニメ制作会社「スタジオガッツ」が立ち上げました。アニメーターを志す若者を地方で育てようと、長澤さんが中心となって運営しています。

東京のアニメ制作会社「スタジオガッツ」が立ち上げた『柏崎アニメスタジオ』で、長澤達也さんと一緒に汗を流す作画監督の牧野太輔さん(35歳)も、東京からの“移住”組です。

【柏崎アニメスタジオ 牧野太輔さん】
「東京にいたときよりも落ち着いて仕事をしてるなという実感もあって、通勤の煩わしさみたいなのはないので…。ちょっと雪が大変なときはありますけれども、『すごく落ち着いて仕事ができてるな』という実感があります」

そしてもう一人のスタッフ、新人の落合幹太さん(28歳)は、スタジオが運営するアニメーター育成スクールを経て、ここに転職してきました。

【柏崎アニメスタジオ 落合幹太さん】
「絵を書くのが好きだったんですけど、元々大学とかは工業系の方で、とりあえず就職したはいいけど面白みがないなということで…。なんかまぁ、アニメーターになるのもいいかなという感じで、今はやらせてもらっています」
「アニメーターの仕事はなかなか難しいですね。僕もやっぱりまだそこまでは描けないんで…」

【柏崎アニメスタジオ 長澤達也さん】
「いや~、自分も苦労しましたよ、その頃は。この厳しい新人時代を乗り越えられなくて、結局、道半ばで辞めちゃう。結構才能あるなって思っても、やっぱり続けられないっていう人が多かったんですよ」
「アニメーターとして活躍するための技術・教育と、活躍するための場所・仕事を与えられるなら、『柏崎アニメスタジオ』がその役目をちゃんと正しく担えているんじゃないかなって思います」

とある日曜日。
『柏崎アニメスタジオ』の長澤達也さんが、何やら準備を始めていました。

「これはですね『お絵かきジム』って言いまして、おそらく日本唯一だと思うんですけれども、一般の絵を趣味にしている方に、現役で働いているアニメーターが直接お絵かきを教えるっていう、そういう“お絵かき教室”になりますね」

スポーツジムならぬ『お絵描きジム』は、プロからレッスンを受けて表現力を鍛える場所となります。

同人誌に掲載するイラストを創作中の会社員・清水亮太さんは、“ジム”について
「一人だとやっぱ行き詰まってしまうっていうのも結構あって、うまい人に教わりたいな」と、その魅力を話しています。

【柏崎アニメスタジオ 長澤達也さん】
「シワって必ず何もないところに発生しなくて、物体と物体が交わるところにできるんですよ」
【会社員 清水亮太さん】
「立体感出てきますね、これだけで。やっぱ自分が気づけなかったところ、ポイントって結構多々あるなって思ってて…。雪の質感ってどうやって出すんだろうってめちゃくちゃ悩んでたとこなんで、いろいろとこういうところで学べるっていうのはすごいありがたい」
【柏崎アニメスタジオ 長澤達也さん】
「そう言ってもらえると冥利に尽きますね」

『柏崎アニメスタジオ』が設立されて5年経ち、全国の企業や団体からも仕事の依頼が舞い込むようになってきました。

【柏崎アニメスタジオ 長澤達也さん】
「0から10まで自分がやることで、その依頼主さんから直接『いや~よかったよ』と感謝されたりっていうところが、東京にはない地元のお仕事ならではの感動かなって思ったりしますね」

デジタル技術の普及により、アニメーションの制作は、場所を問わずできるようになりました。

『柏崎アニメスタジオ』を設立した荒尾哲也さん(55歳)は、柏崎市に拠点を持つことで「ここには東京では発生しない仕事ってのは発生するんですよ。そういう意味では、一つ一つの仕事で自由度がとても大きい」と話しています。

そして長澤達也さんも、拠点を置く柏崎と「ともに成長したい」と考えています。

【柏崎アニメスタジオ 荒尾哲也さん】
「この街の中で楽しみつつ、だけどメジャーの番組も忘れない。っていうメジャーとローカルの融合っていうんでしょうかね、メジャーとローカルの両方を楽しむ」【柏崎アニメスタジオ 長澤達也さん】
「工業のまち・柏崎をPRするアニメ『飛び出せ柏崎II』のシナリオは、この辺を全部アニメショップにして日本中からオタクが押し寄せて、経済発展して復興するっていう夢物語なんですけど…。こういう柏崎もありだなっていう『柏崎の事を考えてほしい』というきっかけになるのがアニメーションっていう媒体だと思うから、これが“アニメのチカラ”なんじゃないかと思います」

地方発のアニメスタジオがまちを元気にする!
そんな長澤さんの夢が広がっています。

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