スーパーマーケットもない“村”に、コンビニができました。オーナーの村への熱い思いから出店が実現。唯一無二のコンビニとそこに集う人々に密着しました。
唯一のスーパーが撤退…そんな“村”に今年10月オープンしたローソン
和歌山県田辺市にある「ローソン龍神村西店」。24時間・年中無休で、次々にお客さんが訪れます。
(女性)「便利ですごく助かります。スーパーがなくなったので」
週に2、3回来店するという女性。買ったのは、地元産のシイタケや大根菜など夕飯の食材が中心です。
通常のコンビニの品ぞろえに加えて、特に充実しているのが「野菜」。ジャガイモや玉ねぎの詰め放題は、この店の名物です。スーパー代わりに使う人も多く、都心のコンビニとは違った利用も目立ちます。
(客)「楽しいな。ストレス解消になる」
和歌山市内から車で約2時間のところにある田辺市龍神村地区。人口は約2600人で、65歳以上が半数近くを占め、高齢化と人口減少に悩んでいます。住民の松場弘さん(92)に話を聞きました。
(松場弘さん)「ここは銀座くらい(栄えた場所)やったんや。なんでもそろったな。ここへ来たら酒でも魚でもなんでも」
かつて軒を連ねていた店は一軒また一軒と閉店。そして去年、ついに唯一のスーパーまで撤退してしまいました。
(松場弘さん)「ものすごいな、変わりようが。子どもはおらんわ、年寄りばっかりなってきた。人口はものすごく減ってきたわ」
そんな龍神村に明かりを灯したのが、今年10月、スーパーの跡地にオープンしたローソンです。これまで最寄りの店まで車で30分以上かかっていただけに、待望の出店でした。
(客 今年10月)「ありがたいですね。支払いとかちょっとした買い物とか」
(客 今年10月)「待ち焦がれてました。不自由してたから、買い物に」
「祖父が生まれ育った龍神で商売を」オーナーの熱い思いで実現
店のオーナーの山田敦司さんは和歌山市内に住んでいますが、ローソン本部が龍神村で店を出す人を探していることを知り、応募しました。
(オーナー 山田敦司さん)「私の祖父が龍神出身。祖父が生まれ育った龍神で商売をするのもありかなと。そこの思いがやっぱり一番ですね」
かつて祖父とすごした思い出の地を少しでも元気にしたい。そこで、唯一のコンビニを買い物だけでなく“地域の交流の場”としても活用してもらえるよう広々としたイートインスペースを設置しました。
(山田敦司さん)「雑談するなり井戸端会議するなり、ご自由に使っていただけたらと思います」
お昼時にはイートインスペースに地元の人が自然と集まります。
(客)「週3くらい来てる。ここでたまたま知ってる人と会って、コーヒー飲んでいこうって」
冷凍の品ぞろえを充実 野菜は週2回オーナー自ら店まで運ぶ
笑顔が増えてやりがいを感じる一方、利益を確保しながらの店舗運営は苦労の連続です。この店では、本部を通じた仕入れに加えて、野菜や肉、魚などはオーナーの山田さんが直接買い付けています。足が早い生鮮の状態では採算がとりにくいため、冷凍の品ぞろえを充実させました。高齢の利用者でも一目でわかるよう、商品名が書かれた札は大きな字で、用途もしっかり表示します。
(山田敦司さん)「料理の用途に応じた22種類。(Q選べる楽しさも?)それもありますし。でもまずは味です。絶対おいしいです」
「鯛のひもの」は最近店頭に並べたばかりですが、すでに人気の商品です。
(女性)「これ(鯛のひもの)初めてなんですけど、挑戦。おいしいって聞いたので。お魚うれしいですね、家族が好きなので」
こう話した女性の夕飯のメニューは、鯛めしと焼き物。ほしい食材がすぐに手に入る環境もここでは貴重です。
この日、山田さんは早朝から忙しく働いていました。
(仲卸業者)「トマトがきょうの競りでちょっと安く落とせたので」
和歌山市内で野菜を買い付け、自ら店まで運びます。大量に仕入れるため、ローソンの流通システムは使えません。常に新鮮なものを提供するには、週に2回は運ぶ必要があります。
(山田敦司さん)「ガソリン代にしても、和歌山インターから有田インターまでの高速代を考えれば、行ったら行っただけ損になるのは分かっているんですけど、やり始めたら意地というところもあります」
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