アメリカ次期大統領のトランプ氏が安倍元総理の妻・昭恵さんを夕食会に招待しました。石破総理に先駆けての面会、どのような思惑があるのでしょうか?
■安倍昭恵さんトランプ氏が面会 政治的な意味は?
良原安美キャスター:
日本時間16日朝、フロリダ州にあるトランプ氏の邸宅「マール・ア・ラーゴ」にてトランプ次期大統領主催の夕食会が行われ、昭恵夫人が出席しました。メラニア夫人のXには3人の写真も投稿されています。
この面会について、日米関係に詳しい明海大学の小谷哲男教授によると「就任前の面会は前代未聞」ということです。さらに状況としては、石破総理よりも先に昭恵さんが面会したことになります。
この面会に何か意味はあるのでしょうか。そして、今後の日米関係についても詳しく見ていきます。
■石破総理との面会は実現していないが…トランプ氏は各国首脳と会談
トランプ氏との面会は、石破総理も要請を出していました。
11月7日、トランプ氏の大統領選勝利後に5分程度電話会談を行い、ここで面会を要請しましたが現時点では実現していません。
石破総理は「トランプ氏側から就任前に海外要人との面会は原則行わないと説明を受けた」と話しました。
ただし、すでにトランプ氏はフランス・マクロン大統領、ウクライナ・ゼレンスキー大統領、カナダ・トルドー首相など、各国首脳と会談を行っています。そして16日、昭恵さんが石破総理よりも先にトランプ氏と面会しました。
この面会について、TBSスペシャルコメンテーターの星浩さんによると「あくまで面会はプライベート。ただ、日本政府としてもトランプ氏とパイプを繋ぎたいため、昭恵さんの訪米支援している」と話しています。
井上貴博キャスター:
今これだけ世界が動いている中で、トランプ氏にとって日本の優先順位は低いのだと思います。日本政府は昭恵さんの訪米を支援するにしても、どう見ているのでしょうか。
TBS報道局 岩田夏弥 政治部長:
外務省や官邸の幹部の話では、今回の訪問について、例えば日本政府のメッセージをここで伝えるとか、そういったことはもう一切関係がなく、昭恵さんが独自で基本的に行っているという状況だということです。
当然、以前の安倍元総理の訪米のときとは全く状況が違います。前はトランプ氏が全く外交経験のないビジネスマンとして突然大統領になったところに、安倍元総理が真っ先に向かいました。今のトランプ氏は4年間の大統領としての経験があり、外交の経験もあるので、一刻も早く会わないといけない当時の状況とはすこし違うところはあると理解した方がいいかと思います。
ホラン千秋キャスター:
就任前に「海外要人との面会は原則行わない」という説明を受けつつ、各国の首脳と会談しているトランプ次期大統領という中で、日本はどう見られているのでしょうか。
岩田政治部長:
トランプ氏にとって、言いたいことがある人に対してはやはり早く言いたい。例えばカナダのトルドー首相は、メキシコ・カナダは国境が接していて不法移民も来るので、アメリカは全関税を25%増やすということを言い始めています。トルドー首相とはそういう話の流れの中でお会いになっていますが、会談の中でも話題になるでしょう。
早く会えば何かいいかっていうと、早く会って話をすることは大事なんですけれども、難しいことを早くも突きつけられるという状況にもなりかねません。
■石破総理とトランプ氏の関係は?安倍元総理は“蜜月”築いたが…
良原キャスター:
トランプ氏は安倍元総理と大変仲が良かったことでも知られていますが、その良好な関係をどのように築いたのでしょうか。
2016年11月、トランプ氏の大統領選の勝利後すぐに2人は面会しています。その後も夫人を交えて4人で食事をしたりゴルフをしたり、日米首脳会談は51回行われました。
岩田政治部長によると、2人が良好な関係を築けたポイントはこうしたことだけではなく、「対中国への厳しい姿勢が共通していた」という点です。日米の結束をアピールし、外交交渉が有利に進みました。
では、対中国への石破総理の考えはどうなのでしょうか。
岩田政治部長:
石破総理は11月、ペルーで習近平国家主席と首脳会談をしました。そのときは両方の国が建設的で安定的な関係を築くことが国際社会にとっても意義があるし、自分が率直な対話を続けられる関係を習主席と作りたいということで、対話の重要性を確認したところです。
ただ石破総理も、当然日米関係が日本の最大の外交基軸だということは十分わかっているので、日米外交があった上での対中国ということになるでしょう。今のところまだ石破総理自身は対米・トランプ氏との関係はこれから作っていかなければいけないところです。
■石破総理とトランプ氏の関係は?良好な関係に必要なモノ
良原キャスター:
対中国への姿勢の他にも日米関係を良好にしていくためのポイントを2つ挙げています。
【1】 強引な交渉への対応力
明海大学の小谷教授によると、過去にトランプ氏は農産品の関税引き下げとセットで、防衛費の増額を要求してきた。相手の情報を引き出す交渉をしてくるので、しっかりと対応する力が求められます。
【2】 個人的繋がりも重要
岩田政治部長によると、官僚の事前協議をもとに交渉するもトランプ氏は、最後はトップ同士の話し合いで決断をするそうです。早期の信頼獲得が重要ということです。
星さんによると、「石破総理は人付き合いが苦手なタイプ。安倍元総理の真似は難しい。安全保障の意見交換など、独自のアプローチが必要」と指摘しています。
井上キャスター:
日米韓3か国での連携は非常に重要だと思いますが、4年前と全く状況が変わっている。だからこそ今、早く会うのが正解なのか、会わないことが正解なのか、その辺りを日本政府はどう考えているのでしょうか。
岩田政治部長:
当然、日米が基軸ですので、いつまでも会えないのは異常事態ですよね。ある程度のところでしっかりやらなきゃいけない。だけど会う場合には、やっぱり何をテーマに話すのか。ただ会って「よろしく」というわけにはいかないですよね。
そうした中でトランプ氏側のこれまでの発言を見ていても、例えば関税の問題や防衛費の問題とか、日本に対して何らか「もっと貢献しろ」ということを言ってくる可能性は十分あります。それに対してどう応じるのか、実際会うとなったらいろんなシミュレーションも必要ですし、トランプさん側が何を言ってくるのかという事前の調査取材も必要です。
なので、早くやらなければいけないが、慎重にやらないといけないところも十分あるということです。
ホランキャスター:
オフィシャルな場だけでなく、例えば安倍元総理の場合ゴルフなどでも親交を深めたというところがあると、石破総理とトランプ次期大統領はどこか意気投合できそうなポイントがあるのでしょうか。
岩田政治部長:
石破さんはやっぱり安倍さんと違います。やっぱりじっくり話をしたい、そして相手の話をじっくり聞きたいというのが石破さんのスタイルですから、それがトランプ氏に伝わるかどうかですよね。
「紳士な政治家だ」という形でうまく関係が作れるかどうかですけれども、そういった聞く力、それから自分も説明する力、そのあたりがトランプ氏とどううまくいくのかどうかというところでしょうかね。
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<プロフィール>
岩田夏弥さん
TBS報道局 政治部長 元官邸キャップ
小渕総理以来、主に政治取材を担当
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