11月17日、山口県下松市の笠戸湾で、船どうしが衝突し、プレジャーボートに乗っていた3人が死亡する事故がありました。根強い人気の海のレジャーですが、海の上には、さまざまな危険が潜んでいます。その危険とはどんなものか、その対策と命を守るための第一歩となる救命胴衣の正しい着用方法を専門家に聞きました。

先月17日、午前5時半すぎ。下松市の笠戸湾で、4人が乗るプレジャーボートが船と衝突。プレジャーボートは衝突した場所からおよそ1キロ先で沈没し、3人が死亡しました。3人の死因はいずれも水死でした。

もう一方の船は台船を引くタグボートで、台船とロープにプレジャーボートと衝突したような傷が残っていたということです。

プレジャーボートは船釣りのために周南市大島の居守港を出港。タグボートは船の鋼材400トンを載せた台船を引いて香川県から航行していました。

港にいた人
「近くであんな事故があると思ってなかったし船の通りは結構多い、造船所もあるし」

港にいた人
「俺らが昼に出るときにねああいう引き船が、夜出会ったら危ないのぉという感じはあるね」

海のうえで事故が起こったら… 命を守る最後のとりでは

船の事故を防ぐには、まずは見張りが大事です。

事故のあった海域を管轄する徳山海上保安部の管内では、過去5年間で、プレジャーボートの衝突事故は7件起きています。このうち6件の原因は「見張り不十分」でした。

徳山海上保安部・伊藤日出男・交通課長
「当然走る以上は、周囲に対する見張りを厳重にしていただくこと、可能な限りスピードを落とした形で航行いただけると事故の発生も少ないと思われます」

不幸にして事故が起きてしまったらー。

命を守る大きな力となるのが救命胴衣です。

山口県の東部を管轄する第六管区海上保安本部の過去五年間の統計でみると、着用していない状態で転落した62人のうち28人は死亡または行方不明になりました。

一方で救命胴衣を着用して海中に転落した人は30人。このうち5人が死亡したか、行方不明となっています。

こうしてみると救命胴衣の着用で生存率が大きく上がることは間違いないといえますが、救命胴衣をつけてさえいれば命が守られるわけではないこともわかります。今回の事故で死亡した3人も、全員救命胴衣を着用していました。

すこしでも、生存率を上げるためにできることはあるのでしょうか。

まず、実際に救命胴衣を着るとどうなるのか、徳山海上保安部の協力のもと記者が水に入って体験しました。

まずは一般的な、着るタイプの救命胴衣です。

tys 安達誠 記者
「一般的な救命胴衣は上半身がしっかりと守られている分安心感がありますね。股下にも上半身を支えるベルトがあり、自然と足も上がりました」

足が前に浮くことで楽な姿勢で呼吸をすることができました。

続いて、膨張式と呼ばれる救命胴衣。落水時にセンサーが反応して自動でふくらみます。腰巻きタイプは脇腹を覆うように膨らみ、頭が浮いた状態になります。
一般的な救命胴衣よりコンパクトで持ち運びやすいのも特徴です。

しかし、実験の中では「これさえ着けておけば安心」とはいかないことも分かりました。

着るタイプでは、股下のベルトをしていないと、脱げそうになりました。膨張式の救命胴衣では、正常に膨らまなかった場合は危険が伴うことがありました。

膨らみ方によっては顔が水面に近くなり、波を受ければ海水を飲み込んでしまって、パニックになってしまうかもしれません。

命を救うのは正しく着用した救命胴衣

水難学会の理事で、長岡技術科学大学の斎藤秀俊教授は、救命胴衣は救命、つまり命を救うのが役割なのではなく、「浮力を『補助』する役割」だと説明します。

水難学会・斎藤秀俊・理事(長岡技術科学大学教授)
「とにかく海面に浮かべることが目的になります、海面に浮かんだときに意識を失っていて、顔が水面についていれば当然窒息するわけですね浮くばかりではなくてそのときどういう方向を向いていたか、水の底の方を向いているのか、空を見上げるように浮いているのかこれによって結果として大きな事故につながるか、良かったという事故につながるのかが決まってきます」

意識を失っていても、救命胴衣を正しく着用していれば、呼吸を確保できる可能性も高まります。

水難学会・斎藤秀俊・理事(長岡技術科学大学教授)「事故を起こして万が一海中に投げ出されたならば、海で呼吸を確保できるように、救命胴衣をしっかりと身につけると、こんなところが重要になってくると思います」

陸上にはない危険が潜む海。事故を防ぐには見張りや、気象・海象の確認などがもっとも重要です。そして、万が一のときに命を救うのは正しく着用した救命胴衣です。

海上保安庁では海のレジャーの注意点をまとめた「ウォーターセーフティガイド」を掲示しています。

船、水上バイク、遊泳、釣りなど、レジャーのシーン別に注意すべきポイントが紹介されています。

海上保安庁のウェブサイトに公開されていますので、出かけるときの参考に検索してみてください。
https://www6.kaiho.mlit.go.jp/watersafety/index.html

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