福島県内で長く続く老舗にスポットをあてる「老舗物語」。今回は、福島市で江戸時代から続く和菓子店、名物の「みそぱん」が繋いだ8代目の店主の想いに迫ります。

工房の中に広がるほんのりと甘いみその香り。今から40年前に誕生した伝統菓子「みそぱん」です。

看板に「元祖みそぱん」の文字を掲げるのは、福島市荒町に店舗を構える『駒田屋本舗』

ショーケースにはみそぱんを中心としたこだわりの和菓子が並んでいます。創業はなんと、江戸時代後期。いまと同じこの場所で同じ和菓子店として始まりました。

--渡邊浩光さん(8代目店主)「何年創業とはわからないんです。初代の方が亡くなったのが仏壇にある過去帳で分かっていて。それが1818年。」

店主の渡邊浩光さんは8代目です。

--渡邊浩光さん(8代目店主)「(昔)なかなかお砂糖というのは手に入らないと聞いていて、時代時代で手に入る材料でお客さんのニーズに応えながら製造した。」

--渡邊浩光さん(8代目店主)「コーヒーを入れた角砂糖をきっと作ってたんですよ。」

洋菓子、パン、あんこなど作る商品を変えてきたその証拠に、当時使われていたラベルなどがいまもしっかりと残っています。

--渡邊浩光さん(8代目店主)「子どものころに卒業アルバムで将来の夢を書くと思うんですが、僕は“お菓子屋”“まんじゅう屋”って書いてあるんですよ。」

3年前に他界したお父さんの跡を継ぎ、弟の昌俊さんとともに、幼いころから夢見たお菓子屋さんとして和菓子を作りつづけています。

--渡邊浩光さん(8代目店主)「これがお味噌になります。なるべく地元の素材を使って製造できたらいいなと思っています。」

生地に使うのは県産の味噌と小麦、砂糖そして膨張材のみ。固さを整えた生地を専用の機械で分割して12分間蒸していきます。6分ほど経つと・・・ふんわりとふくらみました。ほんのり茶色に色づいたら完成です。

もっちりとした食感に鼻から抜ける甘い味噌の香りが、シンプルながらも幸福感のある味わいです。創業から200年以上。実は、みそぱんが生まれたのは意外な理由でした。

--渡邊浩光さん(8代目店主)「約40年くらい前にあるお客さんが“中のあんが無く、みそまんじゅうの皮だけが食べたい”という方がいた。」

もともと販売していたみそまんじゅうの生地に惚れ込んだ客からの要望で生まれた商品だったのです。

さらにこちらも。女性客からの要望で生まれた『チーズみそぱん』。中にはなめらかなクリームチーズがたっぷりと入っていて、みそとの相性もぴったりです。

そんな、みそぱんの存在感を大きくしたのが東日本大震災です。

--渡邊浩光さん(8代目店主)「水道が来てボイラーが炊けるようになってからは、毎日朝から晩までこのみそぱんを製造していました。」

少ない材料で短時間で多く生産できることから、毎日1万個のみそぱんを県内のスーパーに届け続けました。

--渡邊浩光さん(8代目店主)「“震災の時はこのみそぱんで生き延びたんだよ”という方もいらっしゃるくらいでした。」

どんなときも市民とともにあった駒田屋のみそぱん。渡邊さんは未来をどう見ているのでしょうか。

--渡邊浩光さん(8代目店主)「うちの娘は別の仕事に就いている。ただこれだけ長く愛された店なので、なんとか今後も末永くご愛顧いただけるようにしていきたいなと思う。これはだんだんに考えていきたいと思います。」

どの時代に生きる人にも変わらずに愛されてきた駒田屋。あすも…あさっても…この場所で作り続けます。

『ステップ』
福島県内にて月~金曜日 夕方6時15分~放送中
(2024年12月12日放送回より)

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