もし自分や家族が自転車事故の加害者になってしまったら…。皆さんは、「備え」できていますか?

■問われる「刑事上」「民事上」の責任 約9500万円の賠償命令も

上村彩子キャスター:
自転車と歩行者の事故件数は、2016年からは毎年2000件を超えていて、ここ数年は増加傾向にあります。2023年の事故件数は3208件、そのうち歩行者の死亡や重傷事故件数は358件ということです。
※警察庁資料より

自転車は、道路交通法で「軽車両」の扱いになり、事故を起こした場合は、「刑事上の責任」と「民事上の責任」が問われることになります。

刑事上の責任では、死亡させた場合は過失致死罪に、けがをさせた場合は過失致傷罪などに問われる可能性があります。

民事上の責任では、死亡やけがをさせた場合、損害賠償の責任が発生。損害賠償が高額になるケースがあります。

過去の自転車と歩行者の事故のケースでは…

2008年、当時小学校5年生の男の子が夜間帰宅中に、当時62歳の女性に衝突。女性は頭を強く打ち、意識不明の状態が続きました。神戸地裁は、約9500万円の賠償命令を出しています。

2010年、当時42歳の男性が信号無視をして、当時75歳の女性に衝突。女性は5日後に死亡しました。東京地裁は、約4700万円の賠償命令を出しています。

■「現在の司法の限界」1億円近い損害賠償、払えなかったら?

ホラン千秋キャスター:
気をつけていても事故は、どこで起こるかわかりません。いざというときのために、保険に入るなど備えをしている人も多いのでしょうか。

交通事故案件 累計100件以上 野口辰太郎 弁護士:
加入率は、年々増加傾向にあると聞いています。ただ、3人に1人は加入していないといわれていて、未加入の人は相当数存在する状況です。

井上貴博キャスター:
私も子どものときは(自転車の保険に)入っていませんでした。今、電動アシスト自転車など種類もさまざま広がって、それぞれにリスクがあると思います。

例えば、子どもが事故を起こして損害賠償命令を受けたとしても、1億円近い金額は払えないこともあるかと思います。そういう場合、どうなるのでしょうか。

野口辰太郎 弁護士:
保険に入っていない、お金も持っていないとなると、最終的には被害者が泣き寝入りをすることになってしまいます。

現実的に、取れないところからは、取れないというのが、現在の司法の限界となっています。

オンライン直売所「食べチョク」秋元里奈 代表:
(自転車は)かなり身近な乗り物なので、これだけの賠償命令が出ている事例を知っている人が少ないのかなと思います。

11月から厳罰化され、酒気帯び運転になりそうな人にお酒を提供するだけでも対象になるなど、昔だと厳しくなかった点も、いまは見直されています。保険などでケアしなければいけないものになっているという自覚がある人と、ない人に分かれているのかなとは思います。

井上キャスター:
取れないところからは取れないというのはわかりますが、被害者からすると「たまったものじゃない」ですよね。

野口辰太郎 弁護士:
そうした状況を改善するために、各都道府県が、自転車の保険について加入義務を定めている状況です。

■34都府県「加入義務」罰則は? 購入時に勧めるも…

上村キャスター:
自転車保険の義務化が進んでいます。加入義務は34都府県で、努力義務は10道県です。
※国土交通省HPより(2024年4月1日現在)

東京都は2020年4月から「加入義務」となっています。

自転車保険の加入率は、全国で65.6%ですが、保険加入を義務化している地域での認知率は39.1%だったということです。
※「au損保」自転車利用者1万5000人調査

義務と知らなくても、保険に入っている人も多いのかもしれません。

自転車保険には、相手を死亡・けがをさせた場合に損害を賠償する「自転車損害賠償保険」などがあります。レイ法律事務所の野口辰太郎弁護士によると、内容によっても変わるそうですが、▼年間の保険料は1000円~5000円、そして、▼補償限度額は1000万円~1億円だということです。

ホランキャスター:
保険以外に何か備えておくべきことはありますか。

野口辰太郎 弁護士:
自転車の特殊性としては免許がいらないというところにあります。たとえ免許がなかったとしても交通ルールをしっかり確認しておくことは大事かと思います。

ホランキャスター:
「車の免許を持っていないから、車のルールを知らなかった」では済まされないような状況はありますね。

井上キャスター:
「加入義務」「努力義務」となっている自治体で加入していない場合、ペナルティなどはあるのでしょうか。

野口辰太郎 弁護士:
現在のところ、罰則を定めている自治体はないと認識しています。

井上キャスター:
入らなくても、そのままになってしまうということでしょうか。

野口辰太郎 弁護士:
技術的な問題として、自転車そのものに紐付けて加入させることも、人に紐付けて加入させることも、現状では難しいといわれています。

オンライン直売所「食べチョク」秋元里奈 代表:
自転車を購入するときに、「入らなければいけない」とセットにすることも難しいのでしょうか。

野口辰太郎 弁護士:
販売店で購入すると必ず勧められますが、義務化していないというところで加入しない人もいる状況です。

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<プロフィール>
野口辰太郎 弁護士
東京弁護士会所属
交通事故案件累計100件以上

秋元里奈さん
オンライン直売所「食べチョク」代表 33歳
神奈川の農家に生まれる

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