松江市にある中国電力島根原子力発電所の2号機が、約13年ぶりに再稼働しました。
福島第1原発と同じ「沸騰水型」原発の再稼働は宮城県の女川原発に続いて全国2例目。
全国で唯一、県庁所在地にある原発が動き始めました。
「3、2、1、ゼロ。起動位置。」
7日、島根原発2号機の中央制御室では運転員が核分裂を止めている制御棒のスイッチを原子炉起動用の位置に切り替えました。
そして午後3時ちょうど。
「2号機、原子炉起動します。H13、CR(制御棒)引き抜きます。降下用意。3、2、1、0。…全挿入、全制御棒全挿入。」
137本ある制御棒が徐々に抜かれるとカウンター表示が増えて行きます。
中国電力は1時間50分後に核分裂が安定的に続く臨界になったと発表しました。
中国電力島根原子力本部 三村秀行 本部長
「福島(事故)以前よりは原子炉施設としての安全性は非常に向上したというようには考えてございますけども、これで絶対に今後、事故は起こらないという考え方は持っていませんので。福島のような事故を起こさない、そういった安全対策を完全にやり遂げる、という、まずはそこに注力をして行きたい。」
その再稼働を前に、松江市や米子市では。
「再稼働反対」
市民団体が抗議集会を開き、米子市では公会堂前交差点におよそ30人が集まりました。
米子市議会議員 土光ひとしさん
「(福島原発の)事故のこと、それから能登半島地震で起きた様々なことをちゃんと見て、考えて原発の事を考えていきたい」
集まった市民は「STOP再稼働」などと書かれたのぼりや横断幕を持ちながら再稼働反対を訴えました。
「日本の原発で事故は起こらない」という安全神話を突き崩した福島第1原発事故で強化された規制基準をクリアするためにおよそ13年を要した
島根原発2号機。
中国電力は原発に近い宍道断層の長さを申請当初の倍近い39キロと評価し直し、想定する津波の高さも見直して15メートルの防波壁を造るなど
対策を進めました。
そして3年前。
原子力規制委員会・更田豊志委員長(当時)
「島根原子力発電所2号炉の設置変更許可を決定します。」
原子力規制委員会が規制基準に「合格」と判断すると、再稼働是非の判断が自治体に委ねられます。
立地自治体として再稼働について「事前了解権」を持つ松江市が再稼働同意を表明すると、島根県内で残る3つの市も次々と同意、運転停止を求めることができる「措置要求権」などを認められた鳥取県側の自治体も相次いで再稼働に同意の判断を示しました。
そして。
島根県 丸山達也知事
「島根原発2号機の再稼働については、現状においてはやむを得ないと考え、容認することといたします」
丸山知事の容認で原発から半径30キロ圏内の関係自治体全ての同意が出揃い、再稼働の準備が進んで来ました。
先月には能登半島地震を教訓に、自宅が倒壊して屋内退避できないケースや道路が寸断されたケースを想定した広域避難訓練が行われましたが、原発30キロ圏内の住民だけでも最大45万人。
計画策定の主体は自治体ですが、現状のそれで十分と言えるのか、心許なさは否定できません。
一方で、原発を再び運転する中国電力にも宿題が残ります。
再稼働を前に島根原発の所長が口にしたのは。
中国電力 岩崎晃 島根原子力発電所長
「運転員につきましては6割が運転を経験していないと。(過去)当直長を経験していたOB、ないしは発電部長を経験していたOB。これらの人にも再稼働の前段階から現場に来て頂いて、いろいろな昔での経験を伝えて頂いております。」
世界一厳しいと称する新規制基準をクリアする中で運転経験の継承が中断する一方、設備と対策は積み重ねられました。
今も続く「フクシマ」を教訓に、原発を運転する中国電力、それを監視する国や地方自治体、「安全」に向けた不断の努力と点検が求められます。
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