12月に入り、能登半島地震から1年の節目が近づいてきました。多くの住民が地区を出た富山県氷見市姿地区。景色は様変わりし、その在り方は県内だけでなく全国の過疎集落が直面する現実をつきつけています。

記者
「能登半島地震から11か月が経ちました
。氷見市姿地区は海沿いだけでなく地区の中心部も更地が目立つようになりこの1年で様変わりしています」

能登半島地震で大きな被害を受けた氷見市姿地区。特に被害が大きかった海岸線に面した集落。4月にはまだ倒壊した多くの住宅が残っていましたがこれまでに19棟の建物が公費解体されました。

年内にはさらに3棟が解体される予定で、1月1日以降集落の4分の1にあたる15世帯が市内外へ移っていきました。

19の建物がなくなったことで昔から見慣れていた風景が大きく変わりました。

姿地区の住民
「ここに納屋もあったし、まともに(虻が島)が見える。風もまともに当たってくるし」
「話し合い手おらんし。気の利いた人もおらんようになるし。そして戻って来ん人もだいぶおろう」

「家があって幸せやね…」

集落から約10キロ離れた氷見市中心部に暮らす桑原桂子さん(89)は地震の2週間後に息子の敏夫さんと2人で市が用意した応急住宅に身を寄せました。

桑原桂子さん
「あんたたちは幸せやね。家があって」

地震で桑原さんの自宅と倉庫が全壊し、市道をふさいだたため、4月に緊急解体されました。

桑原桂子さん
「明日このうち壊しに来るというたときに涙でた。一人で涙出た…」

応急住宅での生活もまもなく1年を迎えます。

桑原桂子さん
「3月になれば90歳。よくこれだけ生きたと思うわ」

桑原さんは年金暮らしで、家を建て直すのは難しいといいます。

市の家賃補助は残り約1年で、その後どこに住むのかは決まっていません。

桑原桂子さん
「今後のことばっかり考えとる。どこに住めばいいのかと思ってね。どこか玄関に置いてくれんかなと思ったり、自動車の中でも寝てればいいのかなと思ったり」

11月8日早朝、桑原さんの姿は倒壊を免れた自宅の納屋にありました。

桑原桂子さん
「眺めに来た。ここに住めばいいのかなと思ってもみたり」

地震後、体調を崩し遠出を控えていた桑原さん、5か月ぶりに姿地区を訪れました。

桑原桂子さん
「姿の虻が島。懐かしいわ。景色いいね。何とも言えんわ本当に」

亡き夫が建てた納屋は倒壊を免れました。

桑原さん親子は納屋を改修し姿地区に戻ることも考えていますが――

桑原桂子さん
「畳敷いてあるんやけど腐ってしまって。どこをどうすればいいか訳分からん。ここに住めるかね。行くところなければ寝るだけでもね」

残った住民に再び…

11月に行われた菊地正寛市長と姿地区の住民たちによる意見交換会。

地域住民
「知った人の顔を見て話すことが元気の一つになるんじゃないかな。1人でも姿(地区)に戻っていただけたり、色んな人が姿に来ていただけたりして地域が元気になればという風に思っています」

地区を離れた住民が姿地区で家を新築する際の費用補助を求める声や小人数の家族が住める市営住宅の建設を求める声が挙がりました。

菊地正寛 市長
「姿地区に戻りたいと思っておられる方も関わりをずっと持っていたいという方が多いということも分かりました。コミュニティを維持していけるような応援を市としてもしていけたらなと思ってます」

そんな中、11月26日に石川県西方沖で起きた地震が発生し、震度4の揺れが姿地区を襲いました。

一緒に暮らす孫のため、姿地区に残っていた花木尚子さんの自宅では――

花木尚子さん
「孫と2人で布団被って。何かすごく長く感じた揺れを」

元日の地震のあとに修理した玄関の床は今回の地震で再びヒビが入りました。

●花木尚子さん
「1月1日の地震後にコンクリートで全部埋めた。今回の地震で床が開いてきている。もう不安よりもあきらめ、何とかなるだろうって感じ。」

元日のあとも続く余震、新たな地震が姿地区に残ることを決めた住民、戻ることを検討している人たちに暗い影を落としています。

花木尚子さん
「ばたばたした年だった、あっという間の1年。口では『大丈夫、あきらめた』と言ってるけど内心は分からない。それを抱えながらの生活じゃないかな。くよくよしてもどうにもならないし、それよりも前向きに生きていく」

桑原桂子さん
「弱ったもんや。寂しいわいね。みんなおらんようになったら」

能登半島地震からまもなく1年、見慣れた景色、その一部であった多くの住民たちの姿ももう、そこにはありません。過疎化が加速し集落の存続も危機へと陥っていく。能登半島地震から見えてきた日本の過疎集落の現実です。

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