国会で政治とカネの議論が今も続く中、新たな問題です。
自民党員になった覚えがないのに、ある日突然、総裁選の投票用紙が届く…幽霊党員の問題が富山で起きています。

チューリップテレビが独自に入手した国会議員の音声から、この問題を検証します。

「党員でも何でもないんですけど」送られてきた総裁選の投票用紙

「よって石破茂くんをもって当選者と決しました」

9月に行われた自民党総裁選。
事実上の総理大臣を決める選挙だ。自民党の国会議員と党員・党友による投票で行われる。決選投票で石破氏が1位だった。

有権者に占める自民党員の割合が全国トップの富山県。その富山県で驚くべき疑惑が浮上した。

党員にされた男性
「なんでこんなたくさんあるのかなっていうのをまず初めに思って、名前確認していたら、名前の全く違うハガキが何枚もきているんですよ。僕、党員でも何でないんですけど」

本来、自民党の党員以外には届かないはずの総裁選の投票用紙。
それが党員になった覚えのない男性のところに送られてきたのだ。

富山のチューリップテレビが、10月4日に幽霊党員疑惑を報じると。

田畑裕明 衆議院議員
「概要含めてもちょっと私詳細は把握してございませんが」

疑惑の渦中にいるのは自民党の田畑裕明衆議院議員だ。
幽霊党員とは一体どういうことなのだろうか。

田畑議員 裏金議員、旧統一教会との関係…新たに“幽霊党員”問題が浮上

岸田内閣で総務副大臣を務めた、富山1区選出の田畑裕明衆議院議員。

田畑裕明 衆議院議員
「この度、副大臣を拝命いたしました田畑裕明と申します。総務省行政をしっかり前に進めたいと思います」

旧安倍派に所属。派閥の政治資金パーティーを巡り、収支報告書に68万円の不記載が発覚した、いわゆる裏金議員だ。さらに、旧統一教会と深い関係があった。

当初は選挙応援を否定したが、2017年の衆院選では、旧統一教会の礼拝堂で総決起大会が開かれるなど、関連団体から組織的な選挙応援を受けていた。

田畑裕明 衆議院議員
「党の方針に従い今後、団体との関係は一切持ちません」

2024年6月には、政治資金パーティーを巡る問題が国会で取り上げられた。案内状に「ご出席」「ご欠席」という表記以外に「ご入金のみ」という項目を設け、これが「寄付」の呼びかけにあたると指摘を受けた。

立憲民主党 村田享子 議員
「『ご入金のみ』なんですよね、これ。これはパーティーには出席しないけれども、入金はするということですよね。これ、明らかにパーティの会費ではなく、『寄付』を呼びかけるものだと考えますが」

岸田文雄 総理(当時)
「これはまず議員本人が適切に説明責任を果たすことが重要であると考えております」

田畑議員はパーティーの開催を中止。謝罪会見を開いた。

自民党 田畑裕明 衆議院議員
「今回の未熟な判断に対しまして、心よりお詫びを申し上げます。誠に申し訳ございませんでした」

そんな田畑議員に、新たに浮上したのが幽霊党員疑惑だ。幽霊党員にされたという男性が取材に答えた。

党員にされた男性
「こんなになんか知らない名前で(投票用紙が)来るのちょっと気持ち悪いというか、何で俺なんだろうっていう」

これが自民党の入党申込書だ。党員になるには、氏名や住所などを記入すればよい。党費は年間4000円。家族党員は半額の2000円だ。

男性は入党の申し込みをしていないにもかかわらず、自身と見覚えのない名前の家族の分、合わせて6枚の投票用紙が自宅に届いた。

自民党富山県連に問い合わせた。

党員にされた男性
「調べるんでしたら、じゃあ誰の紹介で僕が入っているのか。そもそも名前違うもの来てて、こんなの僕正直迷惑っていうのもあれなんですけど、(党員を)辞めたいんですけど」

田畑議員を支援する企業の関係者が取材に応じた。この支援者は10年ほど前、従業員名簿を田畑議員に頼まれて渡したという。

チューリップテレビが幽霊党員問題を最初に報じてから6日後、田畑議員が支援者に電話した時の音声データが残っている。

「多分架空に近いと思う。ゆみこ、ゆういち、のぶお…」田畑議員が自ら支援者に説明した音声データ

田畑裕明 衆議院議員(音声データ)
「ちょっと会えるかなと思って、ちょっと説明させてほしいなと思ってね。名簿が元々存在しとんねかね。あの、で、これ経緯をいろいろ調べていると、元々あの最初のころ10人ぐらい(自民党に)入っていただいてたのね」

田畑議員は支援者から入手した従業員名簿をもとに、無断で党員登録をしていたことをほのめかした。

田畑裕明 衆議院議員(音声データ)
「俺記録みるとね、平成29年(2017年)からどーっとその御社の名前の社員の方で党員登録しているのね、実は。うちの秘書がその時やっぱり、党員さんを増やさなきゃいけないって言った時に、見繕ったわけなんやちゃね。見繕って入っていただくことになったと」

音声データの中で「党員を見繕った」と田畑議員は話している。さらに、実在しない架空の人物もいたという。

田畑裕明 衆議院議員(音声データ)
「多分架空に近いと思う。ゆみこ、ゆういち、のぶお、のぶこ、ようこって書いてあるんだけど、そこは生年月日とか書いてないから、おそらく架空の方なんだと思うんだよね」

支援者(音声データ)
「まだいっぱいいるんじゃないか?」

田畑裕明 衆議院議員(音声データ)
「いっぱいおる、いっぱいおる、もちろんいっぱいおるから、きりないから」

架空の党員が大勢いると話していた田畑議員だが、この電話の3日後、幽霊党員問題について報道陣が尋ねると…

Q.ご自身の選挙区でこういった問題が起きたことについてどう受け止めていますか?

田畑裕明 衆議院議員
「概要含めてもちょっと私、詳細は把握してございませんが…」

そもそも、なぜこんなことが行われたのか。

“幽霊党員”登録の背景に「党員獲得」のノルマか

2014年、自民党は党勢拡大を目指し、所属する国会議員一人につき、党員1000人を獲得するよう号令をかけた。旗振り役は当時、幹事長だった石破氏だ。

自民党 石破茂 幹事長(当時)
「党員の拡大に向けて本年は全力を挙げて取り組んでまいります」

ノルマ未達成の議員には、不足した党員分一人につき2000円が徴収された。

自民党 二階俊博 幹事長(当時)
「きちっと党の決まりを実行している人と、いい加減に受け止めておる人との間に、ちゃんとやっぱりけじめをつけてやるのがいいんではないか」

こうした党勢拡大の動きが、幽霊党員問題につながったのだろうか。

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