「そんなに俺たちがやってきたことが気に食わないなら、一回自分たちでやってみたらいい」今、永田町を取材していると一部の維新議員から吉村新体制に冷ややかな声が聞こえてくる。新生維新を率いるとして吉村新代表を選出して1週間と経たないなかでいったい何が起きているのか…
維新の代表選 大阪府知事の吉村氏が新代表に
「吉村洋文君、8547票…よって選挙の結果、吉村洋文君が当選人となりました」
12月1日、日本維新の会の代表選挙が行われ、吉村洋文氏が下馬評通りのおよそ8割の得票という圧勝で、新代表に就任した。一方で党員の投票率はおよそ4割と低調で、今回の代表選の注目度の低さを露呈する格好となった。
代表選前から吉村陣営ではない他陣営の関係者からも「多くの党員を抱える大阪で絶大な人気を誇る吉村氏には勝てない」と諦めムードが漂っていて、選挙結果自体は既定路線だったと言えるだろう。
党幹部人事に吉村カラーは?共同代表へ「前原氏推薦」に会見場どよめき
代表選よりも注目が集まったのは、吉村新代表がどんな人事をするのかだ。特に国会活動を担う共同代表を誰にするのかは大きな焦点だった。それは新代表就任直後の会見ですぐに明らかになる。
「共同代表は前原誠司氏にお願いしたい」
吉村代表がこの発言した瞬間、記者会見場にはどよめきが漏れた。それもそのはず、前原氏は今年10月の衆院選前に維新に合流したばかりだったからだ。当選11回で民主党政権時には国土交通大臣や外務大臣を歴任したベテランだが、他党の議員からも「前原さんは維新というより旧民主党や国民民主党というイメージがまだ強く、いきなりの共同代表起用に驚いた」という声も聞かれた。
ベテラン前原氏以外の党4役は若手揃い
前原氏は代表選翌日の両院議員総会で承認され正式に共同代表に就任した。一方、吉村代表は「旧執行部からメンバーを刷新し、若手を登用したい」と党の中核を担う幹部には当選2回の若手が並んだ。
幹事長の岩谷良平氏、政調会長の青柳仁士氏、総務会長の阿部司氏はともに40代。
国会対策委員長に抜擢された、漆間譲司氏は50歳と永田町では“若い”人選だ。少数与党国会のいま、野党第2党として政策実現を図る上で国対が非常に重要な時だ。
特に国対畑を歩んできたわけではない漆間氏の起用については党内から疑問視する声もあがっている。「国対委員長代理として仕事をこなしてきた中司氏や、代表選にも出馬していた金村氏。大阪組の若手から選ぶにしても、国対副委員長だった奥下氏などを差し置いてなぜ国対経験がない漆間さんなのか?」と。
しかし、人事権者である吉村代表は “国対政治”や“飲み食い政治”などと、いわゆる水面下での交渉を重ねて政治を進めるやり方に厳しい発言を繰り返していた。就任後の会見でも「国対委員長のポストは置くが従来の形ではない仕事をしてもらいたい」と話していた。
漆間氏は党内で酒を飲まないことでも知られており、まさに“飲み食い政治”からの脱却の象徴として適任だと判断したということだろうか。
吉村体制に暗雲。旧執行部“一回自分たちでやってみたらいい”
維新の再生、党勢拡大を託された吉村体制だが雲行きは少し怪しいところがある。
必ずしも挙党体制で支えていこうという人たちばかりではないのだ。馬場代表のもと執行部にいたメンバーを取材をすると、新執行部からは一線を引くとはっきりと明言している人もいる。
ある旧党幹部は「そんなに俺たちがやってきたことが気に食わないなら一回自分たちでやってみたらいい。野党第二党が国会内でプレゼンスを発揮するのはどれだけ難しいことか、体験してみたらいい。たちまち維新は誰からも相手にされなくなるだろう」と冷ややかだ。
また、吉村代表の「飲み食い政治」批判についても「早速、国民民主党の玉木氏にSNSで週末お茶しましょうと吉村代表は持ち掛けていたが、それって批判していた飲み食い政治と何が違うの?アルコールが入ってなければいいの?理解できない。個室の喫茶店って居酒屋より高いんじゃないの?」とぼやく。
しかも、吉村代表のSNS投稿の翌日に玉木氏は女性関係の問題を受け、党から役職停止3か月の処分を受けることとなる。
これについてもある党所属議員は新執行部の実力不足が露呈していると話す。
「永田町では前日から玉木氏の役職停止処分の情報は回り始めていた。新執行部はそれをキャッチし国会にいない吉村代表に伝えないといけなかった。それができていないから吉村代表は結果的に嫌味にもとれるようなタイミングでSNS投稿をしてしまった。国民民主側からすれば心証も悪いのではないか」と。
党内から早くも厳しい声が噴出しているのだが、吉村代表が公約を実現するためには、衆院過半数割れの国会でいかに機を見るに敏な対応をとっていけるかが大切になる。
果たして永田町文化を脱しこれまでとは違う新たなスタイルの「国対」を打ち出すことができるのか。新執行部の手腕が問われている。
MBS報道情報局 東京報道部 尾藤貴裕
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