犯罪に巻き込まれた被害者や遺族が服役している受刑者に被害者の思いを届けるにはこれまで、手紙の受け取りや面会を拒否されるケースがあるなど、ハードルが高いとされている。そんな中、去年12月から始まった「心情伝達制度」は被害者と加害者の間に刑務官などが入り、被害者の心情や意見を受刑者に伝えるものだ。今回、子どもを殺害された2組の遺族がこの制度を利用した。受刑者から返ってきた言葉とは?
「ズタズタだから見せられない」10か所以上刺され息子殺害された父親
和歌山県紀の川市に住む森田悦雄さん(76)。森田さんにとって自宅近所にある空き地は特別な場所だ。森田さんはここで最愛の息子を奪われた。
(森田悦雄さん)
「お父さん頑張っていくからってずっといっているんですけど、その言葉を毎年のように言ってるんですよね…うん」
小学5年生だった森田都史くん(当時11)。都史くんは2015年2月、刃物で頭や体など10か所以上刺され殺害された。
(森田悦雄さん)
「体はズタズタやから見せられないとそんな風に言われて…都史くんの状態を見てもらうのは普通では考えられないぐらいひどい傷やって」
殺害したのは近所に住む男 遺族への謝罪は一度もなく 賠償も払われず
逮捕されたのは近所に住んでいた中村桜洲受刑者(32)。殺人罪などで懲役16年の実刑判決を受け服役している。事件からまもなく10年が経つが中村受刑者から森田さんへの謝罪は一度も無く、民事裁判で認められた約4400万円の賠償についても1円たりとも支払われていないという。
(森田悦雄さん)
「地に頭をつけてすりつけてでも謝るのが普通やって。自分がそれだけ大変なことをしたという自覚があまりないかなと」
「連絡一度もない」受刑者へ父親がぶつけた思い「鬼畜生だと思った」
中村受刑者は事件のことをどう考えているのか。森田さんは去年12月から始まった「心情伝達制度」を使って受刑者に初めて気持ちを伝えることを決めた。
心情伝達制度はまず刑務官が被害者や遺族の思いなどを対面で聞き取り、その内容を加害者に口頭で伝える。そして、それに対する反応や答えなどを刑務官が聞き取って被害者側に書面で通知するというものだ。
今年9月、森田さんは近畿地方のある刑務所を訪れ、職員と3時間にわたり面談をした。その中で加害者に伝えたい思いをまとめた。
【森田さんが中村受刑者に伝えた内容】
「都史君は背中や頭など、約10か所も刺されズタズタの状況であったと聞かされ、鬼畜生だと思った。謝罪の言葉は今もない」
(森田悦雄さん)
「どういう流れになるというのも私は初めてですので」「少しでも私たちの気持ちが晴れるようになったらいいなとおもいます」
受刑者から返ってきたのは初めての謝罪「都史くんもやっと安心できる」
森田さんの思いを中村受刑者はどう受け止めたのか。約3週間後、森田さんのもとに「返事」が送られてきた。
【中村受刑者からの返事】
「事件を起こした日はとんでもないことをしたと後悔や悲しい気持ちになる。毎年2月5日には被害者に手を合わせています。すみませんでした」
返事に書かれていたのは中村受刑者からの初めての「謝罪」。そして賠償についても支払い計画を『親と相談する』とし、改めて手紙を送ると回答した。森田さんはこれまで分からなかった受刑者の考えを知ることができ「大きな一歩になった」と話す。
「あー、ほんまに10段ぐらい飛び上がった感じ、今まで9年もこんな状態が続いていているでしょ。うちに親が謝罪に来るとか賠償の話とか、どんな風にしたらこっち側が納得するかをお話してもらったら、都史くんもやっと安心できると思うので」
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