食堂の畳間に置かれた大きな机の前に座り、パソコンの画面に集中する人たち。もくもくと仕事をするのは全員、組織や会社に所属しない、フリーランサー。よく見ると、全員女性だ。
この女性たちは、フリーランサーに発注される様々な仕事をシェアする「Okinawa Freelance women’s network」、略して「OFNE」(オフネ)のメンバー。
「OFNE」が様々な企業から請け負う仕事の中にやってみたい仕事があれば、メンバーは自ら手を上げて受注することができる。文章を書く仕事に興味があるという桃原佳奈さんは、ある仕事に関心を持った。
▽OFNEメンバー 尾崎直子さん
「公園取材、どうですか? 公園に行って何枚か写真を撮って記事にする仕事」
▽OFNEメンバー 桃原佳奈さん
「公園、いいかも。最近ちょっと外に出られるようになったので」
「お船」というだけあって「船長」を名乗るリーダーは、この積極的な姿勢がフリーランスにとって大切だと話す。
▽OFNE “船長” 仲本紫織さん
「やっぱり最初の一歩は自分で踏み出してほしい。シェアされた仕事をやってみようと、まず踏み出す。自分で狩りにいかないと仕事は取れない! 」
「フリーランスは狩猟民族」と笑い飛ばす「OFNE」のメンバー。女性ばかり100人以上が参加している。彼女たちがフリーランスを選んだ理由はいったい何だろうか。
女性がフリーランスを選ぶ理由「育児や介護」が上位
▽比嘉美沙子さん
「子どもたちの学校行事とか、体調を崩したときに対応できるように」
フリーランサー個人が仕事を請け負う仕事は、ウェブのデザインやIT関連、美容まで多岐にわたる。その数は年々増えているが、総務省の調査によると、男性がフリーランスを選ぶ理由のトップが「専門的な技術の活用」なのに対し、女性は「自由な時間で働く」「育児や介護のため」が上位となっている。
もともと印刷会社でデザインなどの仕事をしていた “船長” 仲本さんは、子育てをきっかけに働き方を見つめ直し、家族との時間を増やそうと、2018年にフリーランスの道を選択した。
息子の一頂くんを学校へ送ったあと、帰宅する時間までが仕事。夕方には終えるのが紫織さんの働き方だ。夕方以降や土日は、仕事をしないと決めている。しかしキャリアチェンジして間もないころは、働くペースをうまくコントロールできなかったという。
▽OFNE “船長” 仲本紫織さん
「ほぼ徹夜みたいことをしたりしていて。子どものことを見守りたくてフリーランス生活を選んでいるのに、全く意味ないなと思った瞬間があった。たぶん(フリーランスは)みんなあるんじゃないですかね」
紫織さんの夫、博之さんは、CM制作などを手掛ける会社を経営している。自身が起業した時期と紫織さんがフリーランスの道を選んだ時期が重なっていたこともあり、当初は不安があったと話す。
▽仲本博之さん
「今はそういうコミュニティ(OFNE)をやっている場合じゃないだろとか、固定収入で働いてほしい、みたいな気持ちは正直あって。それで喧嘩になった」
衝突も経験しながらも、良き理解者として紫織さんの仕事を間近で見てきた夫、博之さん。今では、収入など将来の不安から踏み出せない女性の覚悟を後ろから支える存在として、OFNEの活動をリスペクトしている。
OFNEにパンフレットのデザイン作成などを依頼する企業、那覇市の「琉球ミライ」も、働く女性を支えるOFNEの姿勢に共感して仕事を発注する。
▽日高春菜さん(琉球ミライ株式会社)
「フリーランス相手の発注って、どうしても “安い人を選ぶ” みたいになる。そうじゃなく、OFNEの考え方を伺って共感してお願いしている」
一方で、日高さんはOFNEとのやりとりを通して、女性が働く環境について感じていることも打ち明けるー
▽日高春菜さん(琉球ミライ株式会社)
「 “フリーランスを選ばざるえない” 女性たちがたくさんいる。会社側としては、ルールを変えれば、一緒に働き続けられるかもしれないっていう視点を(女性たちから)もらい続けた方がいいのかなと思います」
▽OFNE “船長” 仲本紫織さん
「生き方に悩んでいる女性はたくさんいる。子どもに障害があるとか、シングルマザーとか、親の介護とか。(そういう女性が)孤立しないようにできるといいな、という思いはすごくあります」
「仕事」と「生き方」どちらも自分らしく選択しようとする女性たちの背中を押すOFNEの取り組み。ジェンダー平等を目指す過渡期にある社会を支えている。
<取材MEMO>
OFNEに入会条件はなく、女性なら誰でも入ることができます。最近では仕事の選択肢を広げるためのライティング講座やデザインの勉強会など、スキルアップにつながる活動に力を入れているということです。(取材 宮城恵介)
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