福島県内で長く続く老舗にスポットをあてる老舗物語。きょうは人気の白河ラーメンを支える白河市の製麺所、3代にわたって「麺のおいしさ」を追求しています。

澄んだ醤油ベースのスープにコシのある麺がからむ極上の白河ラーメン。伝統のラーメンに使われる麺を製造する会社が白河市にあります。創業74年を数える「菊忠」。自社工場で製造した麺を市内の飲食店や一般の家庭に向けて販売しています。

老舗製麺所の始まりは、「食」とはかけ離れた「運送業」でした。

--菊地柔雄社長(菊忠)「自分からすればおじいさんが乾麺を始めて、それを父親の菊地吾郎が継いだわけなんですけど。」

社長の柔雄さんの祖父・忠三さん。戦前は運送会社を営んでいましたが、戦時中の苦しい経済状況から廃業に追い込まれました。その後、忠三さんが生計を立てるために始めた麺の製造が、いまの菊忠のルーツです。その忠三さんの跡を継いだのが、息子の吾郎さん。最初は食堂を営業していましたが、「吾郎さんの麺がおいしい」と評判になり、徐々に事業を麺づくりにシフトしていきます。

--菊地柔雄社長(菊忠)「吾郎さんが研究熱心で、どうやったらおいしい麺ができるかって。ひとつひとつ試作しながらメモしてやっていった中で、今でいえば多加水麺という小麦粉に対して水の量が多い麺がよかった。」

吾郎さんが試行錯誤して作り上げた多加水麺は、いまの菊忠の看板商品です。

--菊地柔雄社長(菊忠)「うちの麺は伸びるんですよ!普通の麺屋さんだとここまで伸びない。多加水麺じゃないとこういう風に伸びない。」

一般的な機械で作る麺は水分量が35%ほどですが、菊忠の麺は、それよりも7%から10%ほど多く、コシのある食感に仕上がります。多加水麺を機械で作るのは難しいとされていますが、菊忠では、原料と機械にこだわり麺の製造を行っています。

--菊地柔雄社長(菊忠)「(多加水麺の製造は)製造工程とかいろいろあるんですけど、細かいところはあまりお教えできません。」

--番組スタッフ「それは企業秘密?」

--菊地柔雄社長(菊忠)「そうですね。」

こだわりの麺は、市内の人気飲食店からも重宝されています。白河市で40年間、地元の人の食事処として愛されている『赤門新館』。定番メニューの白河ラーメンなどの麺を菊忠から仕入れています。

--高畠裕 社長(赤門新館)「一度菊忠さんの麺を食べてみて、この調子でこういった麺を作っていただけるのであれば継続して使いたいというのがあったので。だから自信のある麺だと思っています。」

コシのある多加水麺と透き通った醤油スープがよく絡む、至高の一杯です。

--菊地柔雄社長(菊忠)「(父は)仕事に関してはちょっと変人だなと思いました。“水が大事。原料を選びなさい。おいしいものを作りたいと思わないと”と。とにかく吾郎さんお酒が好きだったのでお酒を飲みながら、毎晩のように聞かされた。」

父の背中を見ておいしさを追及する姿勢を学んだ柔雄さんは、麺の可能性を広げる新たな商品の開発を行いました。こちらは、西郷村産の小麦「なつこ」を使った麺です。国内で製造される中華麺のほとんどはアメリカなど外国産のものでしたが、柔雄さんは、老舗だからこそ「地域」を大切にして商売を続けていきたいと考えています。

--菊地柔雄社長(菊忠)「せっかく白河はラーメンがあるので、原料から携わったらもっとおもしろいのかな。もっと地域が活性化するのかなというので始めたのがきっかけですね。」

菊忠は、伝統を紡ぎながら「麺のおいしさ」を追求し続けます。

--菊地柔雄社長(菊忠)「おいしいと言ってもらえるような一杯を作りたい。製造なんですけど食べるところまで想像して作りたい。」

『ステップ』
福島県内にて月~金曜日 夕方6時15分~放送中
(2024年11月28日放送回より)

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