国内のeスポーツ競技人口は現在約400万人といわれています。そのなかで正式にプロゲーマーとして登録されているのはわずか335人。プロになるのはとてもつもない難関です。一握りの厳しい世界で活躍する富山県小矢部市出身のプロゲーマーがいます。謎に包まれたプロゲーマーに密着しました。
都内にあるアパートの一室で、凄まじい勢いでボタンを連打するのは富山県小矢部市出身のプロゲーマー、立川透さん(27)です。
立川さんが主戦とするのが全世界で累計売上本数5500万本、カプコンが1987年に業務用ゲーム機として登場させた対戦格闘ゲームの金字塔「ストリートファイター」のシリーズ最新作です。
立川さんはことし8月、サウジアラビアで開催された賞金総額が世界最高額の6000万ドル(約94億円)というeスポーツの祭典“eスポーツワールドカップ”の「ストリートファイター6」部門に出場しました。世界から集まった強豪32人を打ち破って見事3位に輝き、賞金7万5000ドル(約1095万円)を手にしました。
快挙の報告で富山県庁を訪れた際には、サウジアラビアの民族衣装「ソーブ」を身にまとって登場しました。
プロゲーマー 立川透さん
「僕このまま東京に帰るので、着替えも用意していないので、このまま帰ります」
立川さんは「キャラクター性」と「実力」を兼ね備えたいま格闘ゲーム界を盛り上げる注目の若手選手です。
立川さんの使用するキャラクターは、バレエと柔術を組み合わせた格闘スタイルの女性キャラクター「マノン」。
プロゲーマーの生活とは
“トップオブトップ”のプレイヤーともなれば年収は億超えともいわれるプロゲーマー。立川さんの収入源は大会での賞金に加え、所属チームからのスポンサー料、ゲーム動画配信による広告費や投げ銭など多岐にわたります。
立川さんの1日のスケジュールをみると、午後1時に起床。午後3時ごろから「ストリートファイター6」の練習とゲーム配信に4時間。1時間の食事休憩をはさみ、午後8時から午前3時ごろまで再び練習と配信。就寝は朝6時というゲーム中心の生活を送っているといいます。ゲーム中心の生活となり、立川さんは腱鞘炎がひどく、毎晩アイシングをして寝るといいます。
立川さんが2年ほど前から始めたのはキックボクシング。現実世界でも強くなりたいという考えではなく――
プロゲーマー 立川透さん
「筋肉っていうよりはどちらかというとメンタル部分の強化かなと思っています。そのきつい時間が(相手に攻められた)画面端にいる時間だと思って、ここをどれだけしのげるかみたいな気持ちでやる時が多いですね。ここもう一回腕立てできないと負けるみたいな。プロ格闘ゲーマーをやるってなった時点で、死ぬときに思い浮かぶ自分の人生って7、8割は格闘ゲームになるんですよ。その“格ゲー”にどれだけ時間を費やしたかが僕の人生だと思っていて」
18歳でプロゲーマーとして道を選択
格闘ゲームに全てを注ぎ込む、その信念のルーツとは。
立川さんは浄教寺の次男として生まれ育ちました。
趣味でドラムをやっていた住職の父の影響を受けて、中学・高校と吹奏楽部に所属していましたが――
浄教寺住職で父親の証さん
「大学行く時には音楽の道をやっていきたいと言うて東京に出たんですけど、帰ってきてみたらゲームをやるという風に急に方向転換していて、ちょっとびっくりしました」
小さい頃から「自由に生きろ」と言い聞かせていたという父の証さん。息子は父の言葉通り、当時18歳、大学生ながらプロのゲーマーとして生きていくことを選びました。
記者
「実際にプレーを見られたことありますか?」
浄教寺住職で父親の証さん
「配信も結構見たりしていますし、やっぱり子どものファンって変ですけど、一番笑わせてくれるし、ドキドキさせてくれるし。本当はこうだったのにとか、もっと違う道があったのにとか、後悔しながら生きるとつまらないと思うので、本人が納得がいく人生を送ってくれたらいいと思います」
立川さんは家族からの期待を胸に、ストリートファイターの日本最高峰リーグ「ストリートファイターリーグ」にも出場。今シーズンは名古屋チームの一員として挑んでいます。
プロゲーマー 立川透さん
「いまからやるのはカプコンさん公式のストリートファイターリーグっていう日本国内の一番レベルの高いリーグ戦。チームで分かれて4対4で戦うんですけど」
この日はチームの大将に。両者マッチポイントを迎える激闘を演じます。最後は必殺技を決め、チームを勝利に導きました。
プロゲーマー 立川透さん
「筋トレが生きましたね。メンタル生きたなって思いますね。だいぶ強気で当たれたのが、勝因だったのかなと思いますね」
格闘ゲーム界を熱くさせる男、立川透さんの今後の展望は――
プロゲーマー 立川透さん
「学童とかやろうかなと思っていて。ほかのプロのセカンドキャリアを作るという意味でもそういった場所があるのだったり、子どもにゲームってマイナスなイメージがあるじゃないですか、まだ親世代だと、まだまだゲームやっている息子に対して困っている人が多いと思うんですけど、ゲームをやる場所を正当化する場所を作って、ゲームから何かを学ぶ場所を作っていきたい」
さらなる高みを目指し今後もその活躍に目が離せません。
立川さんは来年3月に開催される優勝賞金100万ドル(約1億5000万円)を手にできる「カプコンカップ」への出場を目指し、残り2つの予選大会に挑みます。
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