果物の栽培が盛んな長野県では果物の加工も盛んですが、手間のかかる作業が多いんです。
「果物の皮むき」もその一つですが、むきにくいグレープフルーツやレモンが「ある技術」を使うときれいにむけるんです。
実はこの技術、かんきつ類では確立されていたのですが、須坂市の研究者がこの技術を信州産の農産物にも使えるようにと研究を重ね、ほかの果物や野菜の皮を簡単に、しかもきれいにむく方法を発見し、今年特許を取得しました。
「するっ」とむける秘密に迫ります。
須坂市にある長野県農村工業研究所。
農産物の加工などを研究するJAグループの施設です。
こちらで皮がするっとむける技術の研究が行われています。
「おはようございます。ここで果物の皮を簡単にむける研究を…」
取り組んでいるのは、上席研究員の滝沢潤(たきざわ・じゅん)さん。
皮をするっとむくために使われる装置がこちら。
ガラスの容器の中に、茶褐色の液体が入っています。
中澤アナウンサーと滝沢さん:
「この機械で簡単にむけるんですか?」
「きれいに、赤ちゃんでも」
というわけで、グレープフルーツやレモンなど、皮がむきにくい果物で実験開始!
まずは手でむいてみますが、いずれも皮がむきにくい上に軟らかいので果肉がつぶれてしまいます。
次は「研究所の装置」を使います!
どんな仕組みで、皮がむきやすくなるのでしょうか?
中澤アナウンサーと滝沢さん:
「液体に秘密がありそうですね?」
「この中には酵素が溶かしてあるんです」
まずは下準備。
果物の両端を少し切って、白い「わた」の部分が見えるようにしたあと…
表面に浅く切り込みを入れます。
レモンとオレンジも同じように酵素液の中へ。
「おもり」を載せたら準備完了です。
中澤アナウンサーと滝沢さん:
「中澤さんスイッチを…」
「結構空気が入っているんですね」
「これは真空ポンプ。真空にして果実の空気を抜きます」
およそ2分後に真空ポンプを止めると、果実の空気が抜けた部分に酵素液が浸み込んだことで比重が重くなり、果実が沈んでいきます。
もう一度真空状態にしてさらに2分。
「わた」の部分に酵素液がしっかり浸み込んでいます。
中澤アナウンサー:
「むきますね」
「ああっ!するするするする」
「こんなグレープフルーツ、見たことあります?」
レモンでも・・。
「ああ気持ちいい気持ちいい!しゅるしゅるちゅるちゅる・・・」
皮だけでなく、薄皮も一緒にむけるんです。
さらにひと房ずつばらして、もう一度、酵素液の中に漬けると、薄皮が全くないカットフルーツに!
もちろん果肉の粒はしっかり残っています!
中澤アナウンサー:
「味はおいしい!」
「グレープフルーツは皮や薄皮に苦みの成分があるので食べやすくなってます」
皮をむきやすくする不思議な酵素。
実は、果物とつながりが深いんです。
中澤アナウンサーと滝沢さん:
「あの酵素って?」
「みかんが腐ると透明になるのですが、その酵素なんです」
「だから安全・安心なんですね」
実はこの酵素を使ってかんきつ類の皮をむきやすくする技術は、発見されていました。
滝沢さんは、この技術を信州産の農産物に応用する研究を重ねてきました。
滝沢さん:
「例えば長野県にあるモモやブドウは、加工では皮が邪魔になる。じゃあ何とかむけるようにと」
研究開始からおよそ10年!
ついに滝沢さんはこの技術をさまざまな農作物に応用する方法を確立し、今年1月、特許を取得しました。
その方法を信州産のブドウ「巨峰」で実演してもらいます。
滝沢さん:
「この巨峰は色が薄い」
「温暖化で色が薄いままになることが多い」
皮の色は薄くても味は同じ。
皮をむけば商品価値は下がりませんが、巨峰の皮はむきにくく、薄皮も残りがちです。
しかし食品添加物の乳化剤につけてから酵素液につけると・・・
中澤アナウンサー:
「つるんと」
「きもちいい」
皮と実の間に酵素液が浸み込み、薄皮とともに簡単にむけるように。
中澤アナウンサー:
「きれい!」
モモはさらに簡単!
酵素液に2時間ほどつけて、水道の水で洗うだけで、皮がするするとむけるんです!
滝沢さん:
「手間が減り収益アップにつながれば」
加工の手間を省くことで作業効率を上げ、異常気象の影響を受けた果物の、付加価値を上げる可能性を秘めた信州発の「皮むき」の技術。
滝沢さんの技術を使えば、巨峰やモモのほかにも、スモモやカブ、サトイモ、クルミなどもむけるということで、様々な果物に応用が可能です。
この技術は、すでに県外の企業がカットフルーツやスイーツの果物に使っているということで、異常気象や人手不足に悩む農業の力になりそうです。
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