車いすで、日本1周に挑戦する女性がいます。これまでに沖縄、四国、九州1周を達成していて、先月から兵庫県と中国地方1周に挑戦しました。山口県の旅に密着しました。

10月23日、午前8時。女性の姿は、山口市にありました。

記者
「おはようございます」


中環(なか・たまき)さん(52歳)
「はじめまして、中と申します」

記者
「よろしくお願いします」

兵庫県から山口県へ
北海道札幌市に住む、中環さんです。兵庫県と中国地方1周への挑戦は、10月8日に兵庫県尼崎市をスタート。出発から14日で山口県に入りました。

中さん
「兵庫始まって中国地方の方みなさんシャイみたいで、今までで過去一、誰も声かけてくれないですよ。でも山口県は誰かが声かけてくれたら嬉しいなって思いながら。誰か声かけてください」

この日は、山口市の「道の駅あいお」をスタート。およそ60キロ離れた下関市を目指します。

中さん
「きのうが土砂降りで全然進めなかったので、土砂降りで進めなかった代わりにサポーターさんといろいろ道を調べられたので、今日は順調に距離を稼げればいいなと思います」

荷物の重さは、およそ11キロ。テントや衣服などを持ち、1日におよそ40キロを走ります。いつも明るい中さんですが、車いすで日本一周を目指す前はふさぎこむ日もありました。

37歳で車いす生活に
中さんは今から15年前・37歳の時に車を運転中、信号待ちをしていて追突事故に遭いました。左半身麻痺の後遺症が残り、車いす生活が始まりました。絶望し、1年間、自宅に引きこもる生活が続いたといいます。ある日、「子どものためにもこのままではいけない」と、自分を変える決意をします。

中さん
「47都道府県を全部テントと寝袋背負って周り切るっていうのが最終目的。障害者になる前も、子供が小さいからとか、女だもんとか、あと経済的とか、言い訳ばっかりで、やりたいことを全然やらないで来てたの。もう言い訳しないで、やりたいと思ったことを、まず準備しなきゃと」

2021年、沖縄1周356キロを10日間で、おととしは四国1周868キロを23日間で、去年は九州1周1075キロを30日間で達成しました。今年はおよそ1か月かけ、兵庫県と中国地方1周・1178キロのチャレンジです。

家族やサポーターの支えで

洗濯や食事の準備、宿泊場所の手配などは、車で同行するサポーターが助けてくれます。山口でのチャレンジの前半は、娘の岬さんが北海道から駆けつけ、サポートにあたります。

中さん
「周防大橋、きれいだったね、晴れの日だったら最高だったけど、風強くて帽子飛ばされそうになって慌てて帽子ひっくり返した」

いつもより速いペースで、調子がいいようです。途中、声をかけ応援してくれる人もいます。

中さん
「今まで兵庫から来たけどこうやって話しかけてくれたの山口県が初めて」

声をかけた男性
「すごいなって思いましたけどね、健常者でもせんようなことを、ハンデがあってもするっていうのはすごいなと思いますね」

出会い励みに困難乗り越え
旅先での出会いが、励みや勇気になると言います。中さんは県内でやりたいことがあります。山口県と福岡県をつなぐ関門トンネル人道に行くことです。

中さん
「関門トンネルの人道で、去年、福岡県側から写真撮ったのでことしは山口県側から写真撮って、それはきょういけたらいいね」

やりたいことがある一方で、大変なこともあります。

中さん

「700メートル先は2号線方面って書いてあるね、700メートル登るのかな、1キロ登るってきついね」

道に迷ったり、車いすが通れる歩道がなかったり、アップダウンが激しい険しい道に遭遇したり。そういう時は危険な道を避けて、先に進みます。

中さん
「山口県の道、歩道が、すごく走りやすい。自分的にはすごく楽しく走れました。山口県に入った途端、みなさん声かけてくれるんですよ、車の中から頑張ってとか。なんかね、やっとなんか認めてもらうじゃないけど、見てくれている人がいると思ったら山口県最高と思っちゃいましたね」

下関市のコンビニエンスストアがこの日のゴールです。背負ってきたテントに泊まり、明日はここからのスタートです。

旅の「楽しみ」関門トンネルへ
翌日、この日は楽しみにしていた関門トンネルを目指します。

中さん
「やっと9号線入ったよ」

サポーター
「じゃあね、いってらっしゃい」

中さん
「安全運転でね、気をつけて。じゃあ、いってきます」

関門トンネルまで、海沿いの道を進みます。北海道の友人が勧めてくれた瓦そばを、食べられたらいいなと話していました。

出発からおよそ1時間、関門トンネルに到着しました。福岡県側からトンネルを渡って以来、およそ1年ぶりです。山口県でやりたかったことができました。トンネル内でも中さんに声をかけてくれる人がいました。

「普通の車いす」に込めた思い
中さんが競技用ではなく、「普通の車いす」を使っているのには、障害がある人へのメッセージが込められています。

中さん
「やっぱり、障害があると何か一つするのにも難しいのよ。できる機会がなかなか無いからそれだったら今自分が乗ってる車いすでいろんなこと、チャレンジしてみないかいっていう思いで、普通の生活用車いすでやってます」

中さんは、旅先で出会った人からの応援金や差し入れは、障害のある子どもたちや引退した介助犬への支援に寄付しています。

お昼時になりました。楽しみにしていた瓦そばを堪能します。

中さん
「いただきます、なんで瓦にしようとしたんだろうね。なんか変わった感じ、変わってる、なんでざるそばが熱いんだろう」

初めて食べる瓦そばが不思議なようす。

中さん
「きょうは関門トンネルも行けたし名物も食べられたしよかったね」

その土地の名物を食べるのも旅の楽しみの一つです。

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