去年、名古屋市守山区で20歳の女子大学生が飲酒運転の車にひき逃げされ、命を落としました。父親は悔しさを滲ませながら「本当は被告を死刑にしてほしい」と訴えていましたが、名古屋地裁は13日 被告に懲役9年の判決を言い渡しました。
ピースサインで優しい笑顔を浮かべるのは、大学生だった水谷歌乃さん20歳。歌乃さんは去年11月、悪質な運転によって理不尽に命を奪われました。
事故があったのは去年11月28日、名古屋市守山区の交差点です。歌乃さんはアルバイトを終え、帰宅するところでした。家まで約300メートル、数分で着く距離です。
青信号で横断歩道を渡っていた歌乃さんは、赤信号を無視して走ってきた飲酒運転のワンボックスカーにひき逃げされ、命を落としました。
「成人式」目前に起きた悲劇
「就職して、結婚して、光り輝く未来を用意してあげたかった」
歌乃さんの父親は、CBCテレビの取材にそう悔しさを滲ませました。
歌乃さんは事故の数日後、好きだったアイドルのコンサートに行く予定でした。2か月後には成人式も控えていました。恒例だった家族旅行にも、もう行くことはできません。
車を運転していた白坂翔被告24歳は事故の翌日に逮捕され、その後危険運転致死などの罪に問われました。
生ビール7杯と梅酒ソーダ割りを飲んで運転
白坂被告は裁判で、酒を飲みひき逃げしたことは認めた一方、「一つ手前の交差点までは記憶がありました」などと話し、起訴内容の一部を否認。弁護側も「危険運転致死の中でも軽い部類」などと主張しました。
一方の検察側は白坂被告が事件前、少なくとも生ビール7杯と梅酒ソーダ割りを飲んで車を運転し、減速することなく時速約60キロで赤信号の交差点に進入し被害者をひき逃げしたと指摘。
さらに、帰宅後、交際相手と一緒に現場近くに戻り現場手前で「このあたりから記憶ないもん」などと発言したと主張しました。
検察はこうした悪質性や危険性、さらに歌乃さんに一切落ち度がないことなどから懲役13年を求刑。
歌乃さんの父親は法廷に立ち「本当は被告を死刑にしてほしい」「歌乃の生きた20年と同じ、20年、刑務所で罪を償ってください」と力を込めました。
裁判長「あなたの態度には疑問が残る」被告は“無言”で頷き法廷後に
そして13日、歌乃さんの父親が見守る中、判決公判が開かれました。
名古屋地裁の坂本好司裁判長は「飲酒して寝落ちした挙句、赤信号を無視した運転行為の危険性は明らか」とした一方で、アルコール濃度がそこまで高くなかったことや、過去の判例などを踏まえ、白坂被告に懲役9年の判決を言い渡しました。
また、最後に裁判長が「どれだけ大きなことをしたのか。これまでの言動を見る限りあなたの態度には疑問が残る」と伝えると、白坂被告は言葉を発さず、頷いて法廷を後にしました。
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