高齢化に後継者不足、異常気象と日本の農業には逆風が吹いています。そんな状況を何とかしようと、静岡県内では新たな取り組みがスタートしています。
イチゴの花に綿毛のようなもので授粉作業を行っていたのは、AIとセンサーを搭載した全自動型のロボット。浜松市中央区に開業したイチゴの完全自動栽培工場「浜松ファーム」です。
<浜松総局 寺坂元貴記者>
「浜松ファームはJR浜松駅から徒歩で5分ほど、こちらのビルの3階にあります」
商業ビルの一角に設けられた浜松ファームは衛生的な環境が保たれていて、無農薬でイチゴを育てることができます。このシステムを開発したのはスタートアップ企業「ハーベストエックス」です。
<ハーベストエックス 市川友貴社長>
「これまではハチ任せだった。我々が食べる作物の大半が受粉が必要ですので、それを人間が制御できる方法で授粉して実を作っていかないといけない。そのためにこのロボットを作っている」
「人とミツバチの協力」をロボットが担う
これまでイチゴやサクランボなどの授粉作業は人とミツバチなどが協力して実施していました。しかし、地球温暖化や猛暑の影響でハチは減少していて、その代わりを授粉ロボットが担います。
<ハーベストエックス 市川友貴社長>
「イチゴにとって実をつけやすい環境をコントロールして、そのうえでロボットが授粉することで1年中イチゴを採ることが出来ます」
ハーベストエックスの本社は東京・文京区の東京大学にあり、ここから浜松ファームのロボットに指令を出します。栽培で得られたデータは東大オフィスで収集し、システムの進化に活用される仕組みです。
菓子メーカー「春華堂」が導入
市川社長が浜松市出身だったという縁もあり、イチゴの生産システムを浜松市の菓子メーカー「春華堂」が導入することを決めました。生産したイチゴは自社のスイーツなどに使うとしている春華堂の山崎社長は、この栽培システムが農業の未来を変えていくと期待しています。
<春華堂 山崎貴裕社長>
「お子さんが見たときに、こんな風にイチゴって作られることもあるんだと知って頂いて、大人になった時こういう農業もあるんだなと当たり前になっていくのが自分は今後の農業、一次産業の未来を築く1つではないかと」
<浜松総局 寺坂元貴記者>
イチゴの栽培システムですが課題も残されています。
栽培に必要な「収穫」は2025年に実装される予定で、余分な葉を落とす「葉かき」という機能は今後、追加されます。この授粉という機能はリンゴやコーヒー豆などにも応用が可能でハーベストエックスは今後、海外展開も視野に入れています。農業改革はロボットやAIを駆使したものだけではありません。アナログ的に農業を支えようという動きも進んでいます。
サラリーマン農業スクール
浜松市中央区のレモン畑で行われたのは「サラリーマン農業スクール」です。
<講師>
「きょうは収穫が終わった後のお礼肥、秋肥について勉強してもらいたい」
このスクールは農業は未体験でも興味があるという人にプロの農家がノウハウを伝授するというもの。1年間で農家デビューを目指すスクールです。
栽培するのは初心者でも簡単に栽培できる品種のレモン。本業を持ちながら土日や早朝に副業としてレモンを栽培し、年間200万円以上の副収入を目指す取り組みです。
<受講生>
「前の職業を定年してから、農業に就きたいなと思ったのですが、いきなり農業経営はできないとあきらめていたんですが、ここに入れば農地も世話してくれるということで」
卒業生には5000平方メートルの畑を無料で貸し出します。なぜ、こうしたスクールを開設したのか。後継者不足などによって国内の農家は減少の一途をたどっていて反比例するように耕作放棄地は増えています。こちらのスクールでは畑での指導だけでなく、経営や作物管理に関するノウハウもレクチャーすることで農業人口の増加を後押ししたい考えです。
<スクールを主催する JFM 山本哲久社長>
「要請があれば全国にハウツーやノウハウをそのまま移していけると思っている」
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