ベテランの彫刻作家の話題です。
木彫りの「大日如来」は細部まで緻密に彫られ、穏やかな表情が印象的です。
作者は山梨県北杜市に住む94歳の女性です。
これまでおよそ200人を指導し、今でも仏像の彫刻を続けています。

ひとつの木片が緻密に彫られ、姿を現す仏の姿。
制作しているのは北杜市長坂町の小川美代子さん、御年94歳です。

木彫り像職人 小川美代子さん:
「美術品ではなく、仏像は祈りの対象だということを聞いた。沈んでいる人、涙を流している人、ちょっとでも慰めになればいいなと思って彫らしてもらっている」

80歳を機に山梨に移住して、北杜市にアトリエを構え創作活動を続けています。

これまでに観音像や阿弥陀如来像など60体以上を制作してきました。

平山裕子アナウンサー:
「彫る場所によって彫刻刀を使い分けているんですか?」
木彫り像職人 小川美代子さん:
「丸刀や平刀、小刀など全部違うのよ」

100種類以上もの彫刻刀を巧みに使いこなします。

木彫り像職人 小川美代子さん:
「これから顔を彫らないといけない。顔を彫るときが難しい…。20体彫っても30体彫っても全部顔が違う」

こちらは運慶が制作した大日如来像を再現した作品です。完成まで1年半を費やした大作です。

木彫り像職人 小川美代子さん:
「光背(仏像の後ろの装飾)が細かいでしょ?全部ノミで穴を開けて折れないようにた。光背だけで8か月くらいかかった」

こちらの白衣観音像は東日本大震災の被災地へ想いを馳せて彫りました。

木彫り像職人 小川美代子さん:
「(東日本大震災で)残された人が大変な思いをしているのではと思った。亡くなられた人への鎮魂」

小川さんは30歳のころ趣味として草花を中心とした文様を彫り、漆を塗って仕上げる鎌倉彫を始めました。

鎌倉彫りの講師としても精力的に活動し、東京や横浜でおよそ200人を指導してきました。

作品には婦人向け生活雑誌「家庭画報」のコンテストで特別賞を受賞したものもあります。

漆器から仏像へ作品が変わったきっかけは、偶然テレビでみた仏師の言葉でした。

木彫り像職人 小川美代子さん:
「なにげなくテレビを見ていたら、仏師の人が出ていた。その人の言葉に衝撃を受けた」
「木の中に仏様がいる、私は周りの木くずを払うだけだとおっしゃった。中から仏さまがでてきてくださると。ものすごく感銘した」

そこで40代後半から大仏師・松久朋琳の門下・小野直子さんの元で仏像彫刻を本格的に習い始めたのです。

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