300年以上の歴史を持つ新潟県長岡市の『小国和紙』。
現在、生産しているところはたった1軒しかありません。

その300年以上の歴史を持つ伝統をつなぐ、職人の手すき和紙づくりの工房に、『カメラマンが魅せられた風景』がありました。

長岡市小国町小栗山にある「小国和紙生産組合」の今井宏明さん(51歳)は、妻・千尋さん(50歳)の家業を継ぎ、小国和紙職人として28年。
原料の楮(こうぞ)を煮てほぐし、1日に手作業で100~150枚をつくっています。

こうぞはクワ科の植物。皮を煮て繊維状にほぐし、トロロアオイの根と水を混ぜて和紙にすきます。トロロアオイの粘りが楮の繊維を均一にするそうですが、紙すきの材料配分はまさに職人技。
こうぞの長い繊維が絡まった薄く丈夫な紙のヒミツです。

小国和紙のもう一つのヒミツは「雪さらし」。雪と日光の力で紙が白くなります。
雪と共にはぐくまれてきた“文化”です。

「今年みたいに雪が少ないと、せっかく雪さらしの注文もらっていても、なかなか雪さらしが思うようにできない」

自然が相手では自分たちではどうすることも…、と今井さんは笑います。

農業ができない冬場の貴重な収入源として、小国和紙は発展してきました。

1973年には国の無形文化財に、その翌年には新潟県の無形文化財にも指定されていますが、小国和紙の生産者は現在1軒のみとなりました。

「できれば誰かに引き継いでもらいたい。それが自分の家族でなくても…」
「誰かやりたいって人がいたら引き継いでほしいなと思う」と、
唯一の紙すき職人である『小国和紙生産組合』の今井宏明さんは話しています。

「せっかくここまで私たちも携わってきた仕事だから、頭の片隅に置いてもらえる紙屋になりたいし、これから目指していきたい」

和紙を生活の中でもう少し使いやすいものに持っていけたらと、今井さんは今日も雪国の伝統をすき続けます。

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