BRICS拡大後初の首脳会議に臨む9カ国首脳(ロシア、10月23日) ANI PHOTOーREUTERS

国際関係の新時代が夜明けを迎えようとしている。世界のGDPに欧米諸国が占める割合は低下し、多極化が進行している。新秩序の中で地位を確立しようと、各国はしのぎを削る。

注目されるのは2つの新興経済グループだ。1つは、最近拡大したBRICSに代表される新秩序のルール作りを主導したい国々。もう1つは、国益を守るため他国との関係構築に力を入れる、より小さな国々だ。


もともとBRICSは金融界での投資対象としてのグループ名だったが、今では国際秩序の多極化を求める動きの象徴になった。欧米主導の世界の在り方に対抗し得るものであり、地政学的に不確実性が高まる状況で重要な存在になっている。

BRICSは今年、ブラジル、ロシア、インド、中国、南アフリカの原加盟5カ国に加えて、エジプト、エチオピア、イラン、アラブ首長国連邦(UAE)が加入して9カ国に拡大した。さらにはNATO加盟国のトルコ、親米国のタイやメキシコ、世界最大のイスラム国のインドネシアなど、30カ国以上が加盟の意向を表明している。

この「BRICSプラス」の加盟国と候補国の多様性は実に魅力的だが、その一方で問題にもなり得る。政治や経済の体制や国家の目標が大きく異なる国々だからだ。中国とインドのように、一部地域で軍事的な対立関係を抱える国もある。

5カ国だけの時期にも、共通の利益に基づいて共通の行動計画を策定することは難しかった。今後、共通のアイデンティティーと政策課題を確立させるためには、息の長い努力が必要だろう。

BRICSには、かなりの持久力がある。欧米のアナリストらは当初から、BRICSはいずれ崩壊するか、無意味な存在になると予測していた。しかし10月下旬にロシア中部の都市カザンで開催された拡大後初となる首脳会議を経て、BRICSプラスは一層の拡大に向けて動きそうだ。同時にこの会議の開催は、ウクライナに侵攻したロシアを孤立させようという西側諸国の努力が失敗したことを示す。


ただし原加盟5カ国の間でも、根本的な目標について合意があるわけではない。中国とロシアは、アメリカ主導の世界秩序に正面から挑もうとしている。だがブラジルとインドは国際諸機関の改革を求めることに重点を置いており、反欧米路線で突き進んでいるわけではない。

この状況に、加盟国の増加が変化をもたらすかもしれない。9カ国のうち新規加盟の4カ国を含む6カ国が非同盟運動(NAM)に正式加盟しており、ブラジルと中国の2カ国がオブザーバー参加している。BRICSプラスには欧米諸国に挑戦するというより、世界秩序の民主化に重点を置く中道派という内なる力があるように思える。

西側諸国は最近、途上国の信頼を損なっている。EUは凍結中のロシア中央銀行資産の利子収益をウクライナ支援に充てると決定し、非欧米諸国に不安を与えた。この結果、国境を越える決済などの新たなシステムに関心を示す国が増えているようだ。

BRICSプラスの9カ国は世界の人口の46%近く(G7は8.8%)、GDPでは35%(G7は30%)を占める。ブラジルとロシアに加えてイランとUAEが加盟したことで、原油の生産と輸出でも世界の約40%を占めるようになった。


これだけの影響力を持つ以上、まず政治と経済に現実的な目標を打ち出し、存在感のあるグループとなるために結束することが必要だろう。BRICSプラスは21世紀の現実をより反映した、世界のガバナンスを立て直すための触媒になる潜在力を秘めている。

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ブラマ・チェラニ
BRAHMA CHELLANEY
インドにおける戦略研究・分析の第一人者。インド政策研究センター教授、ロバート・ボッシュ・アカデミー(ドイツ)研究員。『アジアン・ジャガーノート』『水と平和と戦争』など著書多数。

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