ロシアの侵攻を受けるウクライナのゼレンスキー大統領は13日の声明で、北朝鮮が露軍に兵器だけでなく人員を供給していると述べた。ウクライナのメディアは4日、東部ドネツク州の露軍占領地域で北朝鮮軍の将校がウクライナ軍のミサイル攻撃で死亡したと報じており、既に北朝鮮軍の人員が前線付近で活動している可能性がある。
ゼレンスキー氏は13日の声明で「我々はロシアと北朝鮮の同盟の強化を目にしている。これはもはや兵器の供給だけではない。実際に北朝鮮の人員がロシア軍に派遣されている」と述べた。また14日の声明でも、「北朝鮮の戦争への実際の関与について(ウクライナ政府高官から)詳細な報告を受けた」と明らかにした。人員派遣の規模や目的についての評価には言及しなかったが、北朝鮮によるロシアへの支援が、兵器の供給の段階から人員派遣を含む段階に移りつつあることを示唆した。
ウクライナの英字紙キーウ・ポストなどは4日、ドネツク州の露軍占領地域で3日、現地を訪れていた北朝鮮軍の将校6人がウクライナ側のミサイル攻撃に巻き込まれて死亡したと報じた。
この報道を受け、韓国の金龍顕(キムヨンヒョン)国防相は8日の議会で「事実の可能性が高い」と発言。北朝鮮がロシアに軍隊を派遣する可能性は「極めて高い」と指摘した。これに対し、ロシアのぺスコフ大統領報道官は10日、北朝鮮によるロシアへの兵士派遣について「フェイクニュースだ」として否定した。
ロシアと北朝鮮は6月、包括的戦略パートナーシップ条約を結び、両国の軍事協力の動向が注目されていた。英米のメディアは匿名のウクライナ政府関係者による情報として、北朝鮮から露軍への派遣が既に進んでいると報じている。
米CNNは14日、「北朝鮮の少人数の人員が露軍と共に行動しており、そのほとんどは北朝鮮製の兵器についての工学的な支援や情報交換のためのものだ。最近ウクライナ東部で死亡したのはその一部だ」とするウクライナの情報機関関係者の証言を報じた。
ロシアに供給された北朝鮮製の兵器は旧ソ連時代の技術を基に北朝鮮が独自に改良を加えたものが多く、露軍へ使用法などを指導している可能性があるという。一方、北朝鮮側には、実際の戦場を経験でき、自国製兵器の使用データを集められるなどの利点があるとみられる。
また米紙ワシントン・ポストは11日、ウクライナ軍の情報関係の高官の証言として「数千人規模の北朝鮮の歩兵部隊がロシア国内で訓練を受けており、年末までに前線に配置される可能性がある」と報道した。この高官によると、ウクライナは北朝鮮の戦闘部隊の交戦はまだ確認していないというが、専門家の間では、今後、北朝鮮の部隊が前線に派遣されると、戦況が露軍に有利に傾く可能性が指摘されている。
このほか、英紙ガーディアンは10日、匿名のウクライナ関係者の証言として、ロシアの前線の後方で、数十人の北朝鮮技術者が同国製短距離弾道ミサイル「KN23」の発射について支援していると報じた。北朝鮮は協力の見返りに、偵察衛星に関する技術の提供をロシア側に求めているとみられるという。【ブリュッセル宮川裕章】
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