レバノン南部に展開する国連レバノン暫定軍(UNIFIL)で、イスラエル軍の攻撃に巻き込まれ負傷する隊員が相次いでいる。UNIFILは「イスラエル軍の存在が隊員を危険にさらしている」として抗議。国際社会からの非難も強まっている。
イスラエル軍は9月末からレバノン南部に地上侵攻し、敵対するイスラム教シーア派組織ヒズボラと戦闘を続けている。
UNIFILによると、南部ナクラで10日、UNIFIL本部の監視塔がイスラエル軍の砲撃を受け、隊員2人が負傷。11日にも軍の発砲により2人が負傷した。さらに13日には、拠点の一つにイスラエル軍の戦車2両が入り口を壊して侵入。約45分後に撤退したが、発煙弾により隊員15人が皮膚の炎症などの被害を受けた。
こうした中、UNIFILに要員を派遣しているスペイン、イタリア、フランスなど40カ国は12日、共同声明を発表。「攻撃は直ちに止めなければならず、十分に調査されるべきだ」と非難した。
一方、イスラエル軍は13日、ヒズボラがUNIFILの拠点のそばからロケット弾などを発射していると説明。戦車が拠点に侵入したことについては、負傷した兵士の救出活動のためだったと釈明した。
イスラエルのネタニヤフ首相もビデオ声明で、ヒズボラがUNIFILの部隊を「人間の盾」として利用していると主張。グテレス国連事務総長に対し、戦闘地域からUNIFILを撤退させるよう求めた。
UNIFILは1978年、イスラエル軍がパレスチナ解放機構(PLO)掃討のためレバノン南部へ侵攻した際、イスラエル軍撤退の確認や南部地域の安定などを目的に創設され、その後も国境付近で停戦監視を続けてきた。
各国から計1万人以上の兵士が参加し、レバノン軍と合同でパトロールや地雷除去などの任務を行っている。ヒズボラなどの武装勢力が国境地帯を拠点としないよう監視する任務も含まれているが、イスラエル軍はUNIFILが目的を達成できていないと指摘している。【カイロ金子淳、エルサレム松岡大地】
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