2020年の議事堂乱入など自分が起訴された事件について「免責特権」を主張してきたトランプの願いが叶った(6月28日、バージニア州チェサピークの選挙集会で) REUTERS/Brendan McDermid
<「唖然とした」と、ニクソン元大統領の法律顧問だった弁護士が言うほど、今度の最高裁判決は「トランプ寄り」だった>
米連邦最高裁の大統領免責に関する新しい判決に従えば、ウォーターゲート事件で悪名高いリチャード・ニクソン元大統領も罪に問われることはなく、辞任する必要もなかっただろう、と一部の専門家は主張する。
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ニクソンの法律顧問を務めた弁護士ジョン・ディーンは、ウォーターゲート事件当時の最高裁が今と同じ考えだったら、ニクソンは政治生命を絶たれることもなかっただろう、と語った。ニューヨーク大学法科大学院のピーター・シェーン教授も同意する。
両者が問題視しているのは、最高裁が下した7月1日の判決だ。
共和党の大統領候補指名争いの最有力候補ドナルド・トランプ前大統領は、2021年1月6日の連邦議会議事堂で起きた暴動を招いた反乱扇動など、前回の大統領選の結果を覆そうとした4つの容疑で刑事訴追されている。だが最高裁は、在職中の公的な行為についてはほとんど何をしても罪は問われないという幅広い「免責特権」を認めたのだ。トランプが求めていた通りの判決だ。
判決に「唖然とした」
ウォーターゲート事件は1972年、共和党の工作員が大統領選挙で民主党の候補に不利な情報を得るために、ワシントンのウォーターゲートホテルにあった民主党本部の事務所に侵入し、逮捕されたことから始まった。
ワシントン・ポスト紙の調査により、当時のニクソン大統領は秘密の支払いルートを通じてこの工作員とつながっていたことがわかった。事件の解明に関して、当時FBIの副長官だったマーク・フェルト(事件の渦中では匿名で「ディープ・スロート」と呼ばれていた)が密かにポスト紙の記者に協力していたことが後に判明した。
ニクソンは議会上院で弾劾されそうになり、1974年に大統領を辞任した。後任としてジェラルド・フォード副大統領が大統領に就任、ニクソンが行った可能性のある犯罪について、無条件の大統領特別恩赦を与えた。
シェーンもディーンも、7月1日に最高裁が示した免責に関する考え方をあてはめれば、ニクソンは法に守られ、辞任することもなかったと考える。
1970年7月から1973年4月まで、ウォーターゲート事件の間もほぼずっとニクソンの法律顧問を務めていたディーンは、今回の最高裁判決に「唖然とした」とコメントした。
「こういうことなら、リチャード・ニクソンも免責されていたはずだと思った」と、ディーンは1日に超党派の団体「民主主義を守るプロジェクト」が主催した電話会談で、記者団に語った。
「ニクソンのウォーターゲート事件関連の事実上すべての行為と、事実上すべての証拠が『公的な行為』に該当する」とディーンは述べた。つまり免責特権の対象だ。
さらに問題なのは、最高裁は多数意見で、大統領の免責特権があてはまる行為は、免責特権がない行為について大統領を起訴するための証拠としては使えない、とした。つまり、大統領の公的な行為は私的な違法行為の証拠としては使えなくなり、その結果、検察が大統領を司法妨害や贈収賄で起訴するのも非常に難しくなる、とシェーンは言う。
司法妨害は、下院司法委員会がニクソンに対して提起した3つの弾劾条項のうちのひとつだった。ニクソンは弾劾される前に辞任した。
今回の最高裁判決は「第二次大戦以後、現在の最高裁が最も行政府寄りであることを裏付けている」と、シェーンは言う。
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