東京オリンピック・パラリンピックの選手村跡地に整備された晴海フラッグ=東京都中央区で2024年5月28日、松山文音撮影

 住宅ローンの金利(変動型)が10月から、多くの銀行で引き上げられた。返済途中の変動リスクに備えるため、「5年ルール」と「125%ルール」という二つの激変緩和措置がある。ただ、仕組みを理解しないと、思わぬ落とし穴にはまりかねない。ローンの負担を減らすには、繰り上げ返済や減税策も有効に使いたい。

 5年ルールとは、適用金利が上がっても5年間は毎月の返済額を変えないというもの。また、125%ルールは5年経過時に返済額を見直す際、従来の返済額の125%(1・25倍)を上限とする決まりだ。例えば、これまでの返済額が月10万円であれば、金利見直し後の返済額は最大12万5000円になる。

 二つのルールがあれば、仮に日銀がこれから急ピッチで利上げした場合でも、一気に返済額が膨らんで家計の収支が劇的に悪化する事態は避けられる。

 ただ、デメリットもある。金利上昇時に毎月の返済額が5年間据え置かれても、未返済分はローンの期間終盤に返済を求められる。元金の返済が後回しになり、返済総額は増えてしまう。終盤に大きな額の未払い利息を請求され、自宅の売却を余儀なくされるケースもある。

 激変緩和措置は銀行によって対応が異なる。メガバンクは全て適用しているが、SBI新生銀行とソニー銀行、PayPay銀行のネット銀3行は、二つのルールがない。

 住宅ローンの返済総額を減らす手段としては、繰り上げ返済がある。毎月の返済とは別に、まとまった金額を返済する方法だ。返済は全て元金に充てられるため、将来支払う利息を減らすことができる。1回の最低返済額や手数料は銀行やローンの種類によって異なる。

 繰り上げ返済には、返済期間を短縮する「期間短縮型」と、毎月の返済額を減らす「返済額軽減型」の2種類がある。支払い利息の減少効果が大きいのは期間短縮型だ。また、どちらを選ぶにしても、繰り上げ返済の額が大きく、実施時期が早いほど利息負担を減らす効果が高まる。

 また、負担軽減措置として「住宅ローン控除」と呼ばれる減税制度もある。2025年12月末までに入居した住宅ローン利用者を対象に、年末の住宅ローン残高の0・7%を最大13年間、所得税から控除できる。控除しきれない場合は、翌年の住民税からも一部控除される。

 例えば、年末の住宅ローン残高が3000万円だった場合、控除額は21万円となる。「13年間控除を受けつつ、ためたお金で繰り上げ返済する」(30代会社員)といった活用法もある。

 控除が適用されるのは床面積50平方メートル以上の物件だったが、24年は所得1000万円以下の世帯を対象に40平方メートル以上に緩和された。控除対象の借入限度額は、環境性能の高い新築で3000万~4500万円だが、支援が必要な子育て世帯や若い夫婦は優遇措置が取られ、24年は4000万~5000万円に引き上げられた。25年も同様の措置が講じられる方向で、24年末に決定する。

 控除を受けるには、初めの年は確定申告が必要。所定の書類を税務署に提出すると、控除分の税金が返ってくる。2年目以降は、勤務先での年末調整だけで手続きは済み、確定申告は必要ない。【浅川大樹】

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