インバウンドが盛況です。日本にやってくる外国人からは「ナゼなのニッポン?」が次々と。「なぜ焼肉はお金を払っている客が焼かなきゃいけないの?」。言われてみれば、日本人も知らない「外国人のWHY?」を追跡しました。
■お客が自ら調理するのはなぜ?
お金を払ってるのにナゼ? この記事の写真 日本在住 アメリカ人「焼肉店に行ったら『肉は自分で焼いて』と言われたの。ナゼお金を払ってるのに自分で料理しなきゃダメなの?」
確かに、焼肉やお好み焼きなど、日本にはお客自ら調理するお店が少なくありません。そこで、まずは外国人観光客がこうしたお店で最初に感じる素朴な疑問をウォッチングしました。
お好み焼き一日20組以上が外国人観光客だという、浅草のお好み焼き店「つる次郎」。外国人客のみなさん、初めて見るお好み焼きに、興味津々!
アメリカから来た観光客「(Q.緊張しますか?)ちょっとね。プレッシャーかかってるからね」
お好み焼き初挑戦だというアメリカ人グループ。
店員「ひっくり返すのが一番大事な瞬間ですよ」 アメリカから来た観光客
「(Q.カップルだと2人で一緒にひっくり返すそうですよ)Yes!!パーフェクト!サンキュー」
アメリカ人夫婦に突然訪れた緊張の瞬間…。息を合わせてひっくり返し、無事成功!お好み焼き初体験に、大盛り上がりです!
もんじゃ焼き一方で、このような声も…。
アメリカから来た観光客「あれは溶けてるスープにしか見えないわ」
外国人客のみなさんには物珍しく見えるのが、もんじゃ焼き。カリカリのお焦げが醍醐味ですが…。
コロンビアから来た観光客「これは食べられるの?」 店員
「焦げた部分がとてもおいしいんです」
最初は怪訝な様子のコロンビア人カップルでしたが、一口食べると「デリシャス!アメイジング!!」と好評。
ルーツここで今回のWHY。お好み焼きやもんじゃ焼きをお客が自ら調理するのは一体なぜ?
「二つの料理のルーツ」と言われているのが「文字焼き」と呼ばれる江戸時代の駄菓子。農林水産省によれば、水に溶いた小麦粉を鉄板に流し込み、子どもたちに文字や絵を書いて教えたことが、名前の由来なんだとか。
その後、子どもたち自身が駄菓子屋で作るおやつとして、人気になりました。
具材が全部混ざっていればOK 浅草つる次郎 取締役浜田圭二さん
「一番重要なのは『だし』や『具材』。具材が鉄板の上で全部混ざっていればOK。ルールも『お好みで』ということで」
さらに、もんじゃ焼きもお好み焼きも、だしと具材に味が凝縮されているため、高度な調理技術を必要とせず、お客自ら調理する流れができたのだといいます。
意外な事実に、アメリカ人たちもこのように話します。
アメリカから来た観光客「お菓子で文字を習ってたなんて全然思ってもいなかったわ。面白い」
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■「焼肉のタレ」がお客自ら焼くきっかけに■「焼肉のタレ」がお客自ら焼くきっかけに
では、焼肉は?
やってきたのは、今、客の大半が外国人客だという焼肉ライク 渋谷宇田川町店。ひとり焼肉のスタイルが人気の秘訣なんだとか。
初来店のスペイン人カップル「質問があるわ。お箸はどこにあるの?」
確かにテーブルにはお箸がどこにも見当たらないです。
引き出しに収納テーブルを広く使えるよう、お箸やおしぼりは座席の引き出しに。さらに、テーブル上のくぼみには、料理をのせたトレーがぴったりフィットします。
トレーは、くぼみに固定 カナダから来た観光客「トレーがスライドするなんて完璧よ。ベリースマート。ベリーユニーク」 タレは6種類用意
「自由に味を楽しんでほしい」とタレは6種類用意。なのに、タレにはない、なんとカレーのルーを焼肉につけている外国人もいました。
スペインから来た観光客「どうして、こんなにたくさんタレがあるの?ヨーロッパなんて卓上にはマヨネーズしかないぐらいよ」
実は、このタレこそが「お客自ら肉を焼く」きっかけだったのです。
現在の焼肉店の元祖「現在の焼肉店の元祖の一つ」とされているのが、大阪市にある食道園。平壌出身の創業者が、今からおよそ80年前に創業しました。食道園によりますと、もともと朝鮮半島をルーツに持つ焼肉はタレにもみ込んだ肉を調理場で焼き、そのまま客に提供していました。しかし…。
食道園 常務取締役古川真秀さん
「肉を直火で焼くと非常に熱い。お客から“食べにくい”という意見を頂いた。何か(アイデアが)ないか」 食道園の発明
そこで、この店で生まれた発明が、つけダレでした。
古川さん「日本で一番最初に考案したと聞いております」
つけダレがあれば、焼きたてアツアツの肉を冷ますことができ、しかも、味付けも自分好みにできると、客から大絶賛。この瞬間、「お客自らが肉を焼く」習慣が生まれたと食道園はいいます。
つけダレの評判は瞬く間に広がり、他の焼肉店も次々と導入、その後、家庭用の焼肉のタレが食卓に登場するなど、自ら肉を焼く習慣はつけダレの普及によって根付いたのです。
日本人も知らなかった新常識に、外国人客も…。
スペインから来た観光客「とても面白いね。日本料理は何を食べても必ずストーリーがあるね」
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■なぜ日本のピザはイタリアと違うの?■なぜ日本のピザはイタリアと違うの?
続いては「ニッポンのイタリアン」です。
ドリアもナポリタンもイタリア料理ではない イタリアから来た観光客「(Q.ドリア知ってますか?)NO。聞いたこともないわ」 イタリアから来た観光客
「(Q.(パスタに)ケチャップソース)NO!」
「オイ!彼が怒っちゃったじゃないか!」
「ドリアもナポリタンもイタリア料理ではない」と困惑したイタリア人に、さらなるWHY。それはピザ。
ピザ日本在住のイタリア人・エドアルドさんたちに聞いてみると、このような答えが…。
エドアルドさんご一行「(Q.日本のピザどう思う?)日本のピザ、ダメ。NOピザ」
「たくさんトッピングがあります」
高温の窯で焼くイタリアのピザと言えば、外はカリカリ、中はモチモチの生地、食材も実にシンプル。
そこでまずは、こんな検証を行いました。日本で人気のピザをイタリア人が食べたら、どんな反応になるのか?
決戦の場は、店舗数・売り上げともに日本一のピザチェーン「ドミノ・ピザ」です。
ドミノ・ピザ 商品開発担当大山幸恵課長
「日本人の味覚に合ったものを作るようにしています。すごく楽しみにしています」 トロピカル
試食してもらうメニューは、日本で根強い人気を誇るというピザ2品。まずはパイナップル満載の「トロピカル」。
すると、ピザを見るや否や全身で拒絶!
全身で拒絶 エドアルドさんご一行「もう帰るって」
どうやらパイナップルとピザの組み合わせ、イタリア人にはご法度の様子。恐る恐る試食しますが…。
試食するも… エドアルドさんご一行「甘すぎる」
「どうしてこんなことしちゃうの?Why Japanese people!?」 大山課長
「(Q.率直にどうですか?)まあ…ですね…」 エドアルドさんご一行
「ゴメンナサイ」
とはいえ、日本人には大人気の味です!あしからず…。
炭火焼ビーフ続いては「炭火焼ビーフ」。牛肉の濃厚な旨味と炭火の香りが口いっぱいに広がる開発担当者イチオシのピザです。
思わず体を乗り出し香りを楽しむご一行。お味の方は?
炭火焼ビーフは、イタリア人に好評 エドアルドさんご一行「オイシイ!ホウレンソウと肉が一緒なのがイイ。グッドコンビネーション」
「スモークな香りがします」
「(Q.イタリアでこのメニューを売ったら?)若者たちが食べる」
イタリア人のお墨付き!
大山課長「こんな料理っぽいものをイタリアではピッツァに乗せないと思うので(高評価は)割と意外です」
一時は緊張が走った現場も、最後はハグして仲直り!?
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■ピザに“タバスコ”は日本だけ?■ピザに“タバスコ”は日本だけ?
ピッツァ→ピザとして形を変え、日本に諸説あるものの、「イタリアで生まれた『ピッツァ』が、アメリカに渡った移民により『ピザ』として形を変え、戦後、日本にもたらされた」と言われています。
日本のピザの草分け的存在日本のピザの草分け的存在が1954年創業の「ニコラスピザハウス」。入り口の看板にも「アメリカンスタイル」としっかり書かれています。イタリア系アメリカ人ニコラスさんが六本木にオープンしました。
ミックスピザ創業当時からのこだわりは、ゴーダチーズがたっぷり乗ったニューヨーク仕込みのピザ。ここで欠かせないのが、ピザの定番調味料とも言える「タバスコ」です。
ニコラスピザハウス 横浜馬車道店「やっぱりタバスコが(ピザに)一番合います」
しかし、イタリア人がピザの試食をしている際は…。
日本ではピザの定番調味料「タバスコ」 エドアルドさんご一行「イタリアではタバスコなんて使わない」
「NO、NO、オンピッツァ」
「(Q.イタリアではピザにタバスコ使わない?)絶対使わない。見たことがない」
そのタバスコが誕生したのは、今からおよそ150年前、アメリカのルイジアナ州。創業者の子孫によれば、「当初は意外な目的で作られた」といいます。
当初は「生ガキのソース用」として作られた マキルヘニー社 創業者の子孫クリスチャン・ブラウンさん
「私の曽曽曽祖父がタバスコを作りました。彼の大好物だったカキのソースとして、タバスコを作ったんです。日本でピザに使われるようになったのは、1960年代から1970年代と聞いています」 日本で広めたのは、アントニオ猪木さん
本来「生ガキのソース用」として作られていたとは驚きです。日本で広めたのは、実はあのレジェンド「燃える闘魂」アントニオ猪木さんです。
事業家として貿易会社も経営していた猪木さんは、当時、日本で唯一のタバスコの販売権を取得しました。猪木さん自身も大々的にPRし、日本での知名度が急上昇。ピザやパスタなど多くの料理に欠かせない調味料になったのです。
イタリア人のWHYを追跡すると、なんと「燃える闘魂」に行き着きました!
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