地球の反対側に位置する南米・パラグアイの小さな村で、戦争や原爆について学ぶ平和展が開かれました。広島から移住した人が多く暮らす村で、平和への思いも受け継がれています。

「書いた!世界にせんそうがなかったらいいです。」
(寄せ書きをした子ども)

たくさんの子どもたちが、平和を願う気持ちを書きました。ここは、南米・パラグアイのラパスという小さな村です。広島の原爆について伝える平和展が開かれました。

ラパスには、広島県にルーツを持つ人が多く暮らしています。戦後、福山市の沼隈町などから多くの人が移住したからです。

「ヤシの木倒して葉っぱを屋根にしたりね幹を2つに割って壁にしたり…」
宮里玉枝さん(沼隈町から移住・2019年取材当時88才)

沼隈町では当時、町の主要産業だったいぐさや漁業がうまくいかなくなったことから、生活困窮者を出さないために「まちぐるみの海外移住」が進められました。

「日本って広いんですか?食べるものとかいっぱいいいものある?日本で一番おいしいご飯って何?」(子どもたち)

村の日本語学校には、移住した住民の孫の世代が通っていて、子どもたちはスペイン語も日本語も上手に話せます。

平和展を企画したのは広島市出身で、JICA青年海外協力隊としてパラグアイで活動している只野杏奈さんです。企画のきっかけは、高校生の時に訪れた「原爆投下機の出撃地」、テニアン島で聞いた語り部の話でした。

「『今もなお戦争をしている国が沢山あるなかでこの時代に生まれたことを幸せだと思いなさい』って話をされてすっごくそれが胸にささって、原動力というか。」
只野杏奈さん

只野さんの思いに共感したラパスの日本語学校や広島県人会も協力しました。

「ラパスはちょっと平和な地域だから(戦争の歴史に)あまり関心がない人が多い。今の現状が世界的にも厳しい中で、こういう平和展の開催は意義がある。」
(広島県人会会長 河野敏さん)

只野さんや、現地で活動する他の隊員に会場の様子を撮影してもらいました。2日間にわたる平和展には、ラパス日本語学校の子どもたちや現地の学校の生徒が時間ごとに分かれて訪れました。

「なんで原子爆弾が広島に落とされたんでしょうか。ちょっと難しいと思います…」
「戦争」
「よく知っているね!」
(只野さんと子どもたち)

只野さんは、原爆による被害や広島の平和への取り組み…、世界では今も戦争による被害が出ていることなどを話しました。地元の学校に通うパラグアイ人の生徒たちも、講話に真剣に耳を傾けていました。

「(展示や講話の内容は)信じられませんでした。当時そこにいた住民の悲しみを感じました。」
(地元の小学生)

「(展示を見て)講演で只野さんが語っていた「この時代に生きられる幸せ」を感じさせられました。」
(地元の高校生)

平和をつくっていくためのきっかけのひとつとして、参加者みんなで折り鶴を折りました。

折り鶴を初めて折った子どもたちも多いようです。

「もういっこ折ろう」
「面白いよね!」
「面白い」
(子どもたち)

みんなで平和を願って折った折り鶴は千羽鶴になりました。平和展の感想を、日本語学校の校長先生がインタビューしてくれました。

「核爆弾をなくしてほしいと思いました。」
(松村博也さん小学6年生)

「戦争の恐ろしさを学びました。他にもたくさん日本のことを学べてうれしかったです。」(松永透さん小学2年生)

ただ、日本の戦争の歴史を授業として詳しく学ぶことはないため、特に低学年の子どもたちにとっては難しい内容もあったようです。

「見てコレ!見て!」(低学年の子どもたち)

「あのときはきゃっきゃしてみちゃったけど大人になったときに、あのときああいう悲惨なもの見たなって記憶に残ればなと思います。」
(只野杏奈さん)

さっそく「自分にできること」を考えた頼もしい生徒もいました。

「こういう日本人アジア人って感じだと聞かれるんです。原爆とか…」
(河野錫さん・高校生・祖父が北広島町から移住)

河野さんは会場準備などを手伝い、只野さんが任期を終えて帰国したあとは平和展の開催を引き継ぎたいと名乗り出ました。

「先生私が引き継ぐよ!って言くれてすっごくうれしかったです。やって良かったなって思いました」
(只野杏奈さん)

「なんでパラグアイに生まれたんだろうって考えた時に広島、唯一の被爆国の血を受け継ぐものとしてここからも平和を訴えていくことが今わたしにできることかなって思いました。」
(河野錫さん・高校生・祖父が北広島町から移住)

遠く離れた地球の反対側でも、平和をつなぐ取り組みが進んでいます。

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