紫金山・アトラス彗星が、夕方の空に壮大な姿を見せて話題になっています。

どんな彗星なのでしょう。
山陽学園大学地域マネジメント学部の米田瑞生さんにききました。

(米田瑞生さん)
「中国の紫金山天文台やNASAやハワイ大学が手掛ける、アトラスと呼ばれある小惑星地球衝突最終警報システムの観測網により発見されたため、このような名前が付けられています。C/2023 A3 という符号もつけられています」

「彗星は、冥王星(40天文単位、1天文単位は地球と太陽の距離、1億5千万km)の軌道より外側から、10万天文単位の領域にある“オールトの雲”と呼ばれる領域からやって来たと考えられています」

「このような太陽から離れた温度の低い領域には、水や二酸化炭素などが凍った状態、いわゆる氷の状態で固まっている天体がたくさんあるようです」

「このオールトの雲にある『氷天体』が何らかの原因で軌道が乱れ、太陽系の中心をめがけてやってくるのが、彗星です。彗星も水星も『すいせい』と読み、ややこしいですね。『彗星』を英語名の「コメット」と呼んで区別することも多いように思います」

太陽に近づいたらどうなる?

ー彗星が太陽に近づくとどうなるのでしょうか。

(米田瑞生さん)
「太陽に近づいた彗星は、温度が上がり、氷でできた本体が溶けて、バラバラとチリ・ガスをばら撒きます。彗星が見せる尻尾のような構造は、彗星が通った軌道にばら撒いて残していったチリやガスが、太陽の光を散乱して輝いているものです。彗星によっては、太陽に近づいた時に崩壊してしまうこともあります」

「今話題の紫金山・アトラス彗星について、正確なことはまだわかりませんが、すでに太陽から遠ざかるところで、再び故郷の“オールトの雲”の領域に帰っていきます。さらに、オールトの雲の領域を通過して、二度と太陽系に帰ってこない可能性さえあります」

定期的に太陽に近づく彗星もある

ーほかにはどんな彗星のタイプがありますか?

(米田瑞生さん)
「一方、定期的に太陽に近づく彗星もあります。代表例は、ハレー彗星ではないでしょうか。76年ごとに太陽に接近します。最後に太陽の近くにやって来たのは、1986年でした」

ー当時話題になったことを覚えています!!

(米田さん)
「このときハレー彗星は、地球から見ると太陽の反対側にあったため、地球からはその壮大な姿を見ることができせんでした。それでも、太陽系の中心部に近づいたハレー彗星に各国が探査機を接近させ、彗星の正体を詳細に調べることができました。1910年やそれ以前の接近時に、人類に目撃され、記録がたくさん残っています」

ー76年ごとに、というのがロマンがあっていいですよね。

彗星と密接な関係にあるのが「流星群」

(米田さん)
「この彗星と切っても切り離せない関係にあるのが、流星群です。10月21日、オリオン座流星群という現象があります。やや活発なこの流星群、ハレー彗星が原因で発生しています」

「彗星が通ったあとに、チリが残されるのは、先ほど説明した通りです。10月21日前後、ハレー彗星が通過した軌道を、地球が毎年通過するのです。よって、この夜見える流星の多くは、ハレー彗星の『かけら』『置き土産』です」

「11月17日に発生する『しし座流星群』は、テンペル・タットル彗星によるものです。この彗星が通過した直後だった1833年には、数万の流星が観測されたという記録があります。

以後、『テンペル・タットル彗星の周期、33年ごとに流星の嵐が見られるのではないか』と多くの人々が期待していましたが、必ずしもそうはなっていません。最後の再接近があった1998年よりも2001年に大規模な『流星の嵐』が発生しました。

ふたご座流星群(12月13日前後)、しぶんぎ座流星群(別名りゅう座流星群)(1月4日前後)、ペルセウス座流星群(8月13日前後)は、三大流星群として有名です。

特に月が夜空にないタイミングであれば、たくさんの流星を見ることができます。夜空を眺めて、彗星の「置き土産」を楽しんでみませんか?

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