国連が定めた「SDGs=持続可能な開発目標」でもうたわれた「気候変動への具体的対策」。それがいま、危機的状況を迎えています。
■海に異変?
今、日本の海に異変が起きています。こちらは神奈川県・小田原漁港。例年、水揚げが1日100匹ほどのブリが…
水産仲卸「鮑屋」吉村一将さん（4月11日）
「きょうは2200本（匹）くらいの水揚げになります」
多い日では1日で5000匹もの水揚げがあるという、異常な豊漁。原因としては、海水温の上昇で餌となる小魚が多く集まったことや、海流の変化などが言われています。
片や、サンマは近年、記録的不漁が続き、去年の日本の水揚げ量はピーク時の14分の1程度に減少。中国などの乱獲に加えて、海水温の上昇による漁場の変化も指摘されています。
■桜の開花にも…
年々、広がる温暖化によるとみられる影響。それはこんな所にも…
宮崎中央公園管理事務所福原武所長
「あまり花が増えることもなく葉っぱが出てきてしまったような感じになっている。今年はちょっと残念ながら花の数が少なくてちょっと寂しい感じになってしまいました」
満開になる前に葉桜になる桜。原因には温暖化も指摘されており、実際、宮崎市のこの冬の平均気温は10.6度と、観測史上最高。開花に必要な冬の寒さが足りず、花がまばらになったといいます。
■早くも真夏日
日本列島を襲う季節外れの暑さ。4月15日には、新潟県三条市で32.5度と、4月の観測史上最高を更新。
市民
「こんなに暑くなるなんて思ってなかった。4月なのにすごいですよね」
おとといも、各地で30度前後まで気温が上昇するなど、近年、顕著になりつつある温暖化の影響は、海外でも…
■世界で異常気象
スペイン市民
「こんなに暑いとは思わなかった」
スペインでは北部で12日、34.9度になるなど、平年より15度も高い気温を観測。東部では猛暑の中、山火事が発生し住民が避難する事態に
また中国南部では、竜巻状の真っ黒な雲が出現し、滝のような雨が降り出すなど、激しい暴風雨に見舞われます。嵐が去ったあとは、見るも無残な姿に…
また広東省では、突然の突風に加え、記録的大雨により、11万人が避難を余儀なくされました。
■「1.52℃」
私たちにとって喫緊の問題ともいえる地球温暖化。それが、いまや一線を越えたかもしれません。
「1.52℃」というきわめて重大な数字を、今年2月、EUの気象情報機関が発表しました。2023年2月から2024年1月までの世界平均気温が産業革命前に比べ、1.52℃上昇したのです。
地球温暖化対策の枠組みである「パリ協定」では、産業革命前と比べ、気温上昇を1.5℃までに抑えるという目標を掲げました。それを今回、初めて1年の平均で上回ったのです。
気候変動の問題に詳しい江守さんは警鐘を鳴らします。
■いずれ長期の平均でも…
江守正多教授・東京大学未来ビジョン研究センター
「今1.5℃を超えたというのはある意味では一時的な現象。ただこのままいくとこのペースではいずれ1.5℃を（長期の）平均えでも超えてしまう」
では1.5℃を超えると、どうなるのでしょうか。シミュレーションでは…
■臨界点
江守正多教授・東京大学未来ビジョン研究センター
「（Q、北極海の方がこんなに（気温が）上がるんですね）世界平均で1.5度ほど上がった時には、場所によってはもっと上がっている。この高緯度の色が赤くなっているところですけれども、例えば、氷がどんどん解けて、“臨界点”を超えてしまう可能性が高い」
温暖化が一線を越えたかもしれない事態。気温が上昇すると、今まで太陽光を反射していた雪や氷が解けやすくなります。
そうなると、露出した地面や海面が太陽の熱を吸収し、さらに気温が上昇。そうして平均気温が1.5度以上、上昇し、どこかで臨界点を超えると、例えば、氷が解けるプロセスが止められなくなるというのです。
■温室効果ガス排出実質ゼロ
一方で、世界各国の温暖化対策は十分といえないのが実情で、アメリカ、EU、日本などは、2050年までに温室効果ガスの排出を実質ゼロにする目標を掲げていますが…
江守正多教授・東京大学未来ビジョン研究センター
「今の状況では世界的に達成するというのはちょっと難しいペース。仮にすべて達成できたとしても世界平均の気温上昇は1.8度位まで上がってしまうのではと考えられていて、1.5度には届かない。そのためには、先進国はもっと早く実質ゼロを達成する必要がある」
国際社会が掲げた1.5度以内という温暖化対策の目標は、今、瀬戸際に立たされています。
（「サンデーモーニング」2024年4月28日放送より）
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