福島県湯川村。美しい田んぼが広がる場所にある、老舗のお店がこちら。「寝るのがいちばん」と思わずうなずいてしまう言葉が書かれた『わたや佐藤』。

--佐藤修さん(わたや佐藤二代目)「昭和25年に私の父が始めた商売です。創業75年になります。」

1950年、二代目店主・佐藤修さんの父、善正さんが創業したお店は元々、布団などに使われていた中綿のみの、打ち直し加工を専門に行っていました。打ち直し加工とは、この文字が表すように打ったり叩いたりすることではなく、まるで紙を優しくとかすかのように、およそ200万本の針のローラーで綿を取り除き、空気をたっぷり含んだ綿に仕上げること。

現在のわたや佐藤では、中綿の打ち直し加工から仕上げまで行っています。

--佐藤修さん(わたや佐藤二代目)「お客さんからお預かりしたお布団です。生地、布地を剥いだものがこういう綿です。お客さん一件一件違います。千差万別です。」

丁寧に古い生地から綿を取り出した後、綿質に応じて綿を足し、クリーニングを行い、新品と遜色のないふわふわの綿に作り変えていくんです。布団ってこんなふうにできているんですね。

そんな寝具を魔法のように蘇らせるわたや佐藤。創業して75年という歴史の中には、わたや佐藤を愛する家族とお客さんの信頼がたっぷり詰まっているんです。

--佐藤修さん(わたや佐藤二代目)「小学校5年ときから、工場に入って手伝いをしてました。布団屋って地味な仕事だなって、嫌だなと思って。東京に就職してサラリーマンになりました。」

わたやの仕事を嫌がっていた修さんですが、なぜ家業を継ぐようになったのでしょう。

--佐藤修さん(わたや佐藤二代目)「稀に、父からの手紙っていうのがあって、『うちには目に見える価値のある財産は何もないけれども、(お客さんからの)信用という宝がある。それをお前に継いでほしい』」

父が築き上げてきた信頼を崩したくない。両親に恩返しがしたい。その思いから湯川村に帰ってくることを決めたそうです。そして現在二代目店主としてお店を、愛する家族と守っています。

奥さんである啓子さんは、主に綿わたでの布団の仕立てを担当。

--佐藤啓子さん「しばらく経って子どもたちが大きくなってから免許取りまして、それで今に至っております。」

『ものづくりマイスター』と『寝具1級技能士』という資格を持っているんだそう。手作業で行う丁寧な仕上げがお客さんの心をがっちり掴んでいるんですね。

そして娘さん、息子さんも、わたや佐藤にはなくてはならない存在なんです。

--渡部裕子さん(羽毛布団担当)「羽毛布団を製造担当しています。父から教えてもらって、作ってます。」

そう娘の裕子さんは現代の定番寝具、羽毛布団の打ち直しを担当。羽毛生地の裁縫から羽毛の打ち直し、充填まで全て1人でこなしているんです。

そんなわたや佐藤には気になる扉が。『椅子張り工房』と書かれていますが、これは?中に入ってみると、息子の修一さんが椅子の修理を行っています。

--佐藤修一さん(椅子張り担当)「打ち直しと椅子の修理の仕事は、どちらも古いものをまた長く使ってもらうための修理だったり、張り替えだったりするので、そういう部分で共通点があったりします。」

生活は洋風化していったことで、暮らしの中で使っていた座布団が椅子やソファーに変化していきました。そのため、椅子の張替えも座布団の打ち直しの延長線上にあるんだとか。

--佐藤修一さん(椅子張り担当)「椅子のお客さんが布団を持ってくるだったりとか、布団出したお客さんが椅子の方もやってくれるんだったらお願いしたいわっていう方も結構いらっしゃいます。」

家族でお互いを支え合っているんですね。

--佐藤修さん(わたや佐藤二代目)「失礼がないようにということに注力しながら、毎日仕事をしているんですけれども。たまには失敗することもありますし、失礼なことになってしまったことも、今までも何回かありますけれども、失敗しながら満足していただける商売に作り上げていきたいなというふうに思ってますね。」

打ち直された温かい布団を通して、これからもお客さんと家族の大きな愛を育んでいってほしいですね。

【わたや佐藤】
福島県湯川村浜崎字水上1409-6
営業時間:午前8時30分~午後6時30分
(1・2月は~午後6時)
定休日:水曜日

『ステップ』
福島県内にて月~金曜日 夕方6時15分~放送中
(2024年10月17日放送回より)

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