「水生昆虫の王者」と呼ばれる「タガメ」。かつて、タガメはかつて、日本各地の里山にありふれている昆虫でしたが、いまは絶滅の危機に瀕しています。静岡県内に残る最後の生息地を守るため、研究者や有志の人たちが活動しています。
浜松市内の山間部に古くからあるため池です。この日はNPO法人ふじ環境研究所のメンバーらが集まり、タガメの個体数の継続調査を行いました。
<学生時代から調査に関わる 西塚宗太郎さん>
「こちらがタガメですね。日本最大の水生昆虫で、カメムシの仲間ですね。小魚とかカエルとか、そういう水中の生き物をこの前脚で捕まえて、口が針のようになっていて、そこから消化液を出して相手の生き物の筋肉を溶かして、それを吸って食事をする」
クワガタの大あごを思わせるようながっしりとした前脚で、自分より大きい獲物にも襲い掛かる姿はまさに水生昆虫の王者。生態ピラミッドの上位にいるタガメですが、現在絶滅の危機に瀕しています。
<ふじのくに地球環境史ミュージアム 岸本年郎教授>
「古い文章を読んでいると、金魚の養殖の害虫だというような事を書かれていることもあって、かつてはそれぐらい普通にいた。特に農薬に弱いということが言われていたり様々な要因から全国で急速に数を減らしてしまっている」
タガメは、「オオサンショウウオ」や「ハヤブサ」などと同じく、「絶滅危惧種II類」に選定されています。また、法律により販売目的で捕獲することなどができません。「ふじ環境研究所」の山田さんらがタガメに注目して、保全活動をしていることには理由があります。
<学生時代から調査に関わる 西塚宗太郎さん>
「子を背負う虫でコオイムシ(II)。夏とか春くらいの時期になるとメスがオスの背中に卵を産んで、オスが卵が孵るまで背負い続けて世話をするっていう虫です」
水面から白い花をのぞかせているミズオオバコ(II)もかつては田んぼなどで当たり前に見られる水生植物でしたが今は数を減らしています。
<ふじ環境研究所 山田辰美理事長>
「様々な身近な自然に乗っかって生存している生き物ですからタガメを守ることで、他の貴重な水辺の植物から、カエルから、様々な生き物を守ることになる」
人の手が入りにくかったことで守られてきた環境ですが、いまは人の手で守ることが求められています。
<ふじ環境研究所 山田辰美理事長>
「昔ここに土のうとかを積んで谷を塞いでこのため池ができたと思うんですけど。100年くらい経ってるんじゃないかと思いますけれども。それがですね、浸食されて薄くなっています。ここは70センチくらいしかなくて」
現在は土のうを積みあげて一時的に浸食を防いでいますが、一度決壊してしまうと池の水位が大幅に下がりこれまでの環境が一度に失われてしまいます。
<ふじ環境研究所 山田辰美理事長>
「もうちょっと鉄骨とかで補強して未来にタガメの生息地が残るようにしたい」
そこで、山田さんたちは工事の費用を集めるため、浜松市と相談し、ふるさと納税を活用したクラウドファンディングを7月から始めました。
<ふじ環境研究所 山田辰美理事長>
「遠い離れ小島や深山幽谷に素晴らしい自然があるわけではなくて、私たちの身近にも魅力的な素晴らしい自然があるんですけどもね。そういうところに自然にまなざしを向けて守っていけるような社会になってほしい」
今回クラウドファンディングを始めるにあたって、山田さんたちが不安に思う部分もありました。それはタガメの生息地が広まることで、乱獲されるリスクも高まるということです。全国ではすでに絶滅してしまった地域もあり、静岡県内でもむやみに捕まえずに、慎重に見守っていく必要があります。
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