今回は獣医師について。動物病院でペットの診療をする獣医師もいれば、公務員の獣医師として活躍する人もいます。

しかし今、この公務員獣医師の不足が問題視されています。

どんな仕事をしているのか、そして不足する要因を取材しました。

家畜伝染病の予防や衛生管理の指導

熊本県阿蘇市の牧場にやってきたのは、獣医師の島村昇吾さん(31)、県の職員です。

この日は、畜産農家が育てるウシが感染症になっていないか確認に来ました。

県職員の獣医師 島村昇吾さん「ウシにピロプラズマ原虫が寄生すると、赤血球を壊して貧血を起こす。その感染がないか、血液を持ち帰って顕微鏡で観察する」

その他、鳥インフルエンザや豚熱などの家畜伝染病の予防や衛生管理の指導など農家の安定的な経営を支える大事な仕事です。

島村さん「一年一産を目標に農家は日々頑張っているので、その下支え お手伝いをしている」

また、県職員の獣医師は食肉衛生検査所にもいます。

安心安全な食肉を提供するために

公務員獣医師6年目 友利愛子さん「安全な肉が提供できなくなることにつながる」

仕事の重要さを話すのは獣医師の友利愛子さん。獣医師はここで安心安全な食肉を届けるために欠かせない解体前の「生体検査」を担当しています。

一人の獣医師が診る頭数は、多いときで1日にウシ100頭やブタ1000頭にも上ります。

必要だけど「なり手が少ない」

県職員の獣医師は今なり手が多くありません。

去年は採用予定者25人に対し採用したのは8人、おととしは採用予定者19人に対し1人でした。

全国の獣医大学を卒業した学生の進路はペットなどの小動物診療が半数近くを占める中、公務員は1割ほどしかいません。

今、145人いる県職員の獣医師のうちおよそ3割はOBの獣医師です。県内の検査所では、そのOBの獣医師の力を借りながら、10か所稼働させているのが現状です。

友利さん「休む暇もなく県内の検査所を行ったり来たりしながら仕事をしているので、人手が不足している実感はあります」

「人手不足」は県の動物愛護センターでも。

なり手が少ない要因は『認知度の低さ』

公務員獣医師12年目 成富英規さん「人手不足なので、DX、電子を活用してより仕事を簡素化できるように日々努力している」

施設には、およそ100匹の保護犬や保護猫がいます。

獣医師の成富英規さんは一匹でも多く新たな飼い主に繋ぐため、動物の健康管理や地域猫の避妊去勢手術などを担っています。

こうして、様々な分野におよぶ県職員の獣医師ですが、なり手が少ない要因について成富さんは。

成富さん「学生を含めた公務員獣医師の認知度が低いことが問題」

ペットを飼っていたことが獣医師を目指すきっかけという人が多い中、「公務員獣医師」のやりがいを中高生や大学生にも伝える必要があります。

成富さん「公務員として県民の役に立てるよう意識を持って、引き取りや保護された犬や猫を次の新しい飼い主に繋げる」

友利さん「病気を治すところではなくて、人に対して働きかけて、人の意識を変えて、それで救える命があるところが魅力だと」

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