日常生活に支援を必要とする人たちを対象に、心と体の機能をサポートする作業療法士。そのなかでも子どもの発達を支援する取り組みをしている作業療法士がいます。
生活しやすい状態を目指して
作業療法士として、宮城県内で発達障害の子どもを中心に、リハビリの支援に携わる佐々木寛子さん。この日は、仙台市内に住む小学5年生、木村嵩芽さんの自宅を訪れました。作業療法とは、生まれつき障害がある人や病気やけがなどで日常生活を送ることが難しくなった人を対象に、「こころ」と「からだ」の両面からアプローチをして、生活しやすい状態を目指してリハビリをすることです。
作業療法士 佐々木寛子さん:
「右側がちょっと硬かった、だからそこを(重点的にリハビリしましょう)」
嵩芽さんは、集中力をつけることや、落ち着いて話を聞くことを目標にリハビリを受けています。興味関心を引き出すうえで重要な「目の機能」を上げるマッサージやゲームを中心に、およそ1時間取り組みました。
木村嵩芽さん:
「(マッサージは)痛いところもあったけど・・(母・夕子さんQ、どこが気持ちよかった?)背中かな。やってもらったら軽くなった」
嵩芽さんの母 木村夕子さん:
「私自身では分からない、息子の体の中で起こっていることを説明してくださる。母の一面からみるとなんかちょっと“うーん”と思うことが、意外に順調に成長していっての行動だったりするっていうことが分かる」
「子どもの発達」に注目したリハビリ
10年ほど前から「子どもの発達」に注目したリハビリに取り組み始めたという佐々木さん。最近では遊び場が減っていることも子どもの発達に影響するのではと指摘します。
作業療法士 佐々木寛子さん:
「感覚が一気に成長する3歳までの時期に、何も触らないとか、誰ともしゃべらないとか、何もない環境で育ってしまうと良くない。発達って遅れていってしまうのはすごい危機感を感じている」
一人ひとりに合わせたオーダーメイドのリハビリを組み、心と体の視点から発達を促したいといいます。
作業療法士 佐々木寛子さん:
「発達障害のお子さんって、生まれた時から脆弱性というか、筋肉がすごく柔らかかったりする。神経が発達する時期に大切な遊びを提供すれば、補えるものがあるんじゃないか。体が動けば心も動くし、心も動けば体も動くので、そこは切り離せない」
子どもたちの活躍を支援する社会へ
佐々木さんの取り組みについて、宮城県作業療法士会の大内義隆会長は、サポートを受ける子どもたちだけでなく、周辺への支援にもつながるといいます。
宮城県作業療法士会 大内義隆:
「落ち着かずに集中して座っていられないとか、集団になじめないとか、そういった子たちに対して、教育現場の方々だったり、そこに関わる、支援する方々と一緒に、作業療法士がその方の困っていることを一緒に考えてあげることによって、その子たちの発達をスムーズにできるように、支援することができるんじゃないか」
宮城県内には、900人程度の作業療法士がいます。しかし、その多くが病院や施設に勤務し、佐々木さんのように個人で発達領域の作業療法にあたるケースは少ないといいます。
宮城県作業療法士会 大内義隆会長:
「お子さんによって、見方によっては困っているとか、苦手なことってあると思うんですけど、一方でその子たちの強みだったり、魅力はたくさんあるという風に思いますので。それぞれの個性を生かして地域の中で活躍できるようなそういったところを支援できるような社会があるといい」
専門家としての助言も
佐々木さんは、個別でリハビリにあたるほかにも、宮城県内の福祉施設を訪ねて支援をしています。
作業療法士 佐々木寛子さん:
「高く、というのを一緒に言葉で聞かせながら…」
発達障害のある小学1年生の及川佳音さんです。佐々木さんは、佳音さんのこの日の状態を見て、職員に対して専門家の視点を生かしたアドバイスをします。
NPO法人セミナーレほっぷ 千葉大彦公認心理師:
「毎日(子どもたちを)見ているつもりでも、それが日常になってしまう。第三者とまではいかないが、そういった目線で見ていただけるところで、私たちも気付かないところに気付ける。次につなげるアドバイスをいただける」
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