わたしの防災です。日常と災害時の垣根をなくすとい新しい考え方「フェーズフリー」が静岡県内にも広がっています。
魚のまち 静岡県焼津市で明治10年創業したなまり節専門店「川直」です。「手火山」と呼ばれる伝統的な製法で創業以来なまり節を作り続けています。2022年から販売している商品がいま注目されています。
<川直 山口高宏さん>
「こちらが燻し窯ですね」
作っていたのは、お茶漬けの具として使うカツオの燻製です。なまり節では使わないハラモの部分を燻製します。
<川直 山口高宏さん>
「燻製の中でも『熱燻』という種類になるんですけど、薪で火を燃やしながら強火で魚の中まで火を通していく。煙も出るので、煙も蓋で閉じ込めて香りを付けていく」
お茶漬けセットに入っているのは水を注ぐだけで食べられる「アルファ化米」です。お茶漬けの素と燻製の切り身を乗せ、お茶や水を注ぐだけ。誰でも簡単に調理することができます。
<社会部 大西晴季記者>
「おいしい。カツオのうま味と燻製の香りが口に広がって、おいしいですね」
日常だけではなく災害時にも役立てらないかーと考えました。
<川直 山口高宏さん>
「避難生活が長引いていく中で精神的にもまいってくると思うんですけど、こういった美味しいものが食べられるっていうのは避難者の精神的にも体にもすごい良いんじゃないかな」
お茶漬けセットは「備えない防災」とも呼ばれる「フェーズフリー」という考え方から誕生しました。川直は2022年から「やいづキャンプ飯」というプロジェクトに参加しています。このプロジェクトは代々焼津で引き継がれてきた、魚を長期保存するための加工技術を使って焼津を盛り上げようと立ち上がりました。
<やいづキャンプ飯事務局 岩崎真紗美さん>
「(焼津では)もともと保存する技術が発達していたので、その技術を活用して若い人にも食べてもらおうとでキャンプ飯というテーマにしました」
現在、焼津市内の14社が参加。もしもの時にも、日常にもうれしい商品を展開しています。
<やいづキャンプ飯事務局 岩崎真紗美さん>
「アウトドア以外にも、常温で保存できるので災害時にも役に立ちますし、逆に災害時だけじゃなくて忙しい日常でも簡単な調理で食べられるので、日常も使えるし、非日常も使えるフェーズフリーです」
「フェーズフリー」の対象は食べ物だけではありません。
静岡市の森下公園は普段は親子連れなどで賑わっていますが、災害時には「一次避難地」として人々を守る拠点になります。
<社会部 大西晴季記者>
「いま私が座っているこちらのベンチは、災害時には『かまど』として利用することができます」
2012年に設置された「かまどベンチ」は大人2人で簡単に完成させることができます。
<静岡市公園建設管理課 望月義晴さん>
「こちらは炊き出しとかで料理をする際に使われるものです。(実際には)耐熱れんがを内側に設置してから使用していただく」
かまどベンチのほかにも、飲み水の貯水槽や汲み取り式のマンホールトイレなどが設置されています。
<静岡市公園建設管理課 望月義晴さん>
「街の中ということで、広い広場がなかなかないものですから。災害時にも安心安全で使えるというところです」
フェーズフリーの概念を考案した佐藤さんにポイントを聞きました。
<フェーズフリー協会 佐藤唯行代表理事>
「フェーズフリーという視点を持って暮らしを見つめ直してみると、意外とできていること、できることがいっぱいあるよねってことに気付けるんじゃないか」
柔軟な発想で災害時に対応するフェーズフリーの考え方は、県内でも広がりをみせそうです。
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