海の難所ともいわれる来島海峡の船の安全を守る「来島海峡海上交通センター」に、2人の女性管制官が新たに配属されました。一流を目指し歩み始めた2人の姿を追いました。
“海の難所”来島海峡 船の安全守る新人管制官
1日に約500隻もの船が行き交い、潮の流れによって左右の航行が入れ替わる、世界で唯一の「順中逆西(じゅんちゅうぎゃくせい)」というルールもある“海の難所”、来島海峡。
そんな来島海峡の船の安全を守る来島海峡海上交通センター、通称「来島マーチス」に、今年3月、2人の女性管制官が新たに配属されました。
槌田(つちだ)管制官と、三津山管制官です。2人は2年間、京都府舞鶴市の海上保安学校で、管制官に必要な知識、技能、語学を学んできました。
――この仕事に就こうと思った理由は?
槌田管制官
「海が好だったのでそれに関わりたいと思っていたんですけど、乗り物酔いが激しくて陸上勤務がよくて…」
三津山管制官
「大学生の時に管制官になりたいと思って、父親の知り合いの方に、保安庁の管制官を紹介していただいて…」
配属後は2か月にわたって、来島海峡の強い潮の流れや、それに伴う順中逆西の航行ルールを学ぶなど研修に励むと、6月4日の審査で見事合格。晴れて管制官となりました。
航行する船に情報提供 日々が実践と学び
管制官の勤務は、朝8時半から夕方5時15分までの日勤、次の日の夕方4時から翌朝10時までの夜勤、さらにその翌日は非番のローテーションを繰り返します。
来島マーチスに所属する管制官は全部で31人で、そのうち女性は4人、全員が同じ勤務態勢です。新人の2人はこのスケジュールにまだ慣れないようです。
槌田管制官
「最初は起きるのしんどいなって感じだったですけど、今は起きるか!ぐらいの気持ちでどうにかやっています」
三津山管制官
「夜勤の日、明け方がすごく眠たくなるのでそこがキツいと思います」
管制業務では、刻々と変わる潮の満ち引きや速度を考慮しながら、航行する船に情報を提供します。日々が実践と学びの場です。
三津山管制官
「毎日通る船も違いますし状況も違うので、そういうところで考えなきゃいけない」
槌田管制官は、休憩に入ってもモニターをチェックしていました。
――休憩中もずっと気になる?
槌田管制官
「転流(潮流が反転)が近いときは気にしますね」
過去には船同士の衝突事故が相次ぐ 世界唯一の“航行ルール”
海の難所、来島海峡。3年前にはタンカーと衝突した貨物船が沈没し、乗組員3人が死亡。去年も貨物船同士が衝突し、1人が死亡、1人が行方不明となるなど、事故が相次いでいます。
そこで安全対策として、7月から世界唯一の航行ルール「順中逆西」の運用が一部、変更されました。潮が南に流れている時、来島海峡の航路内では、通常とは逆の左側通行です。海峡から出た後、右側通行に戻すポイントを従来からずらすことで、衝突のリスクを減らそうというのが新しい運用です。
安全な来島海峡へ―
一部変更された航行ルールの運用初日の任務にあたった槌田管制官。行き交う船に新しいルールを無線で英語で伝えます。
しかし、この後、船の進行方向に異変が…。
ベテランの管制官
「勘違いしている可能性がある。航路内左手を勘違いの可能性がある」
ベテランの管制官が船の勘違いに気付きました。槌田管制官、あらためて正しい情報を伝えます。
槌田管制官
「船にとって確認できているのか、こちらが確認を取らないといけないというのを強く感じました。相手の『わかってます』を信用しすぎたかなというのはあります」
反省している間にも、次の船が…。すぐに気持ちを切り替えます。
こうしてベテランたちに見守られながら、日々の任務の中で一歩ずつ成長する新人管制官の2人。
来島マーチス 和田圭太課長
「2人には船が来島海峡航路を通るときに『この人たちの話を聞けば安全に航行できる』と思ってもらえるような管制官になってもらいたいと思います」
槌田管制官
「船にとって必要な情報をわかりやすく丁寧に伝えられる管制官を目指します」
三津山管制官
「日本人なので英語に慣れ親しんでいないので、外国人にもちゃんと伝わるような情報提供をしていくのが理想」
安全な来島海峡へ―。新人管制官の2人は、先輩たちと共に24時間365日、海の難所を見守り続けます。
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