墓石ではなく、木を目印に遺骨を土に埋める樹木葬などの「自然葬」に関心が高まっています。しかし、付近住民とのトラブルの原因になることも。自然葬の現状を取材しました。

町内の90%を山林が占める三重県南部の大台町。自然葬によるトラブルは、川に沿って走る道路脇の斜面で起きていました。

トラブルの火種は、木の根元に置かれた桶のようなもの。表面にむき出しになっているのは、火葬された“人の遺骨”です。

(地元住民)
「勝手に遺骨なんか置いてもらったら困る」「墓地の許可がない」

遺骨を埋葬できるのは“墓地”だけ

木の幹には、手書きの筆文字で人の名前があちこちに。

合わせて12人が眠っているといいますが、実はこの場所は、墓地としての許可や届け出がないとのこと。問題が明らかになったのは、2023年12月の町議会でした。

(大台町 町民福祉課課長(当時))
「町としては、取り扱い要領にのっとった正式な手続きをふんで、墓地としての許可をとるよう促していきたいと考えている」

法律(墓地埋葬法)では、遺骨を埋葬できるのは墓地に限定され、墓地経営には自治体の許可が必要と定められています。

自治体の許可を得てオープン 樹木葬専用墓地には50件の申し込み

管理や維持のしやすさなどから、“樹木葬”をはじめ、「自然葬」への関心は高まっています。

2024年3月、三重県熊野市には、大規模な樹木葬専用の墓地「GOSHIKI」がオープンしました。こちらは、熊野市から墓地の経営許可を正式に取得しています。

(GOSHIKI・大塚武志さん)
「しがらみの少ない形で、安心してずっと預けていただけるというコンセプト。今、樹木葬という形が求められている」

高台にあり、熊野灘が見渡せるこの墓地には、すでに50件の申し込みがあったといいます。しかし、熊野市から経営に関する許可を得るまでには、約2年かかったそうです。

(GOSHIKI・大塚武志さん)
「間違いがあったら困るので、司法書士、行政書士、弁護士などに自治体と交渉してもらった。かなり大変でした」

森のお墓でも「墓地には当たらない」

骨を自然に還す葬り方でも、慎重に進められる墓地の開設。なぜ、大台町の山では、遺骨が置かれるようになったのでしょうか。

山には樹木葬についての説明と思われる立て看板があり、そこには宗教法人の名前が記されています。登記簿などで確認したところ、山を所有し、管理しているのは「自然宗佛國寺」という宗教法人と判明。

法人の代表を務める黙雷住職に取材を申し込みました。2006年、住職は木材を使ったバイオマス発電などの事業を始めるために、過疎化が進むこの地域の山を購入。

遺骨の受け入れは、事業費の一部をまかなうために始めたもので、永代供養なら
1人21万円だといいます。

(自然宗佛國寺・黙雷住職)
「遺骨の下に土があって、自然に還る」

自然葬だという遺骨は、上から土をかぶせておらず、「埋められた」状態ではありません。住職は「森のお墓」と銘打って遺骨を受け入れていますが、「墓地にはあたらない」と強調します。

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